2012 Fiscal Year Annual Research Report
高密度電子流衝突を利用した金属原子再配列・再結合による疲労損傷治癒
Project/Area Number |
23686021
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
細井 厚志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60424800)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 疲労 / 損傷治癒 / 転位 / 高密度電流 |
Research Abstract |
本研究は,高密度電子流衝突によりステンレス鋼の疲労損傷治癒を実現し,その効果を定量的に評価することを目的とした.疲労破壊はその大半が疲労き裂の発生に費やされる.そのため,疲労き裂が発生する前の疲労損傷を治癒させることを本研究の対象とした. 実験において電流印加の有無による疲労き裂発生までの疲労寿命をS-N曲線によって巨視的に評価した.その結果,疲労き裂が発生する前に高密度の電流を印加することによって,疲労き裂発生寿命を約30%増大させることに成功した.この原因を明らかとするために電流印加前後において,①デジタル画像相関法(DIC)により疲労負荷後の残留塑性ひずみを評価し,②マイクロビッカース試験機により材料の硬さを評価し,③透過型電子顕微鏡(TEM)により転位構造を観察した.その結果,電流印加によって残留塑性ひずみが減少すること,材料の表面硬さが回復することが示された.さらに,TEMを用いた微視的な観察結果から電流印加によって転位密度が減少していることが分かった.疲労損傷蓄積の主な原因は,転位の移動と累積である.いずれの結果も疲労損傷によって累積した転位が消滅したことを裏付ける結果である.疲労負荷によって累積した転位が電流印加によって消滅することにより,疲労き裂発生までの寿命が延びることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった,高密度電流場制御により疲労損傷を治癒し疲労寿命を改善させることに成功し,その要因を明らかにすることに成功した.以上のことから本研究がおおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果において,高密度の電流印加により,疲労き裂の発生を遅延させることに成功した.さらに,この原因として疲労負荷により累積した転位が高密度の電流印加により減少したことに起因していることを実験的に明らかにした.今後は,高密度の電子流衝突により累積した転位が消滅するメカニズムを明らかにし,転位論に基づく転位累積モデルを構築することによって,き裂発生までの残存寿命を定量的に評価する.
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