2011 Fiscal Year Annual Research Report
水素環境における金属材料の破壊形態への材料/力学/環境因子の影響に関する研究
Project/Area Number |
23686022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 龍介 京都大学, 工学研究科, 助教 (80363414)
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Keywords | 機械・材料力学 / 破壊 / 分子動力学 / 水素脆化 / 格子欠陥 / 固溶度 / 第一原理計算 / 化学ポテンシャル |
Research Abstract |
本研究では,様々な水素脆化機構の競合の結果,最終的な破壊形態が材料/力学/環境的因子によってどのように決定されるのかを,電子・原子レベルのシミュレーション手法を駆使するとともに,水素脆化関連実験も合わせて行うことにより解明し,水素関連機器の安全設計に資することを最終到達目標としている. 本年度は〔1〕解析的な検討と〔2〕実験的な検討に関して以下の成果が得られた. 〔1〕解析的研究:純鉄に対して水素ガス環境(0.1MPa,70MPa)に対応する水素濃度を与えた際の平衡状態での格子欠陥エネルギーを再現する原子埋め込み法ポテンシャルを作成し,様々な格子欠陥の運動挙動について解析を行った.現実的な水素濃度を用いた原子レベル解析はこれまでほとんど行われておらず,本ポテンシャルを用いた解析の意義は大きい.また,気体分子が乖離して金属中に固溶する際の平衡固溶量を求める式を一般的な場合に対して導出し,第一原理計算に基いた計算を行うことで,様々な金属系に対して高精度な評価が可能であることを確認した.本手法によって,これまでに定量的な実験値が与えられていない系に対しても水素固溶量を評価することができた. 〔2〕実験的研究:金属材料中に電気的に水素を導入する装置を作成し,実際に炭素鋼やステンレス鋼に水素の導入を行った.そして,熱処理と組み合わせることで,拡散性水素と非拡散性水素の両方,または,非拡散性水素のみを導入することができていることを,昇温脱離分析装置を用いた水素濃度測定によって確認した.また,水素導入を行った炭素鋼に対して観察下での破断試験を行い,拡散性水素によって脆化が顕著に引き起こされることを確認した.このように次年度以降の研究を確実に推進するための,基本的な準備ができたと言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析的な検討項目については,水素の影響を擬似的に含む原子間ポテンシャルを作成し,様々な格子欠陥の運動挙動について解析を行った.さらに,気体分子が金属中に固溶する際の平衡固溶量を求める式を導出し,様々な系に対して高精度な評価が可能であることを確認した.また,実験的検討に関しては,これまでに金属材料中に電気的に水素を導入する装置を作成し,実際に炭素鋼やステンレス鋼に水素の導入を行った.そして,昇温脱離分析装置によって所望の水素量が導入されていることを確認した上で,観察下での破断試験を行っている.これらについては,おおむね計画通りであり,本研究は順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に初年度の研究を発展させる方向で研究推進を行う.解析的研究に関しては,擬似的に水素の影響を考慮した原子埋め込み法ポテンシャルを用いて,様々な力学条件下での変形挙動の解析を実施する.また,化学ポテンシャル計算により様々な系における平衡水素固溶濃度を求める.実験的研究に関しては,熱処理と水素チャージ条件を変更することで水素の存在状態を変化させた試験片を作成し,力学試験を行う.この際,デジタル画像相関法を積極的に用いることで,き裂先端場におけるひずみ分布状態を可視化し,水素の影響について検討を行う.
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Hydrogen Concentration Estimation Based on Density Functional Theory in Aluminum and Alpha Iron under Gaseous Hydrogen Environments2012
Author(s)
Sakagami, T, Matsumoto, R., Alfe, D., Taketomi, S., Enomoto, T., Miyazaki, N.
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Journal Title
Transaction of the Materials Research Society of Japan
Volume: 37(in printing)
Peer Reviewed
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