2012 Fiscal Year Annual Research Report
低次元ナノ構造が拓く新奇強誘電特性とその力学的制御
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23686023
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嶋田 隆広 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20534259)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 低次元構造体 / ナノスケール / 強誘電体 / マルチフィジックス特性 / 第一原理解析 / 分子動力学 / ひずみ / 機械的特性 |
Research Abstract |
強誘電特性は材料寸法に非常に敏感であることが知られており、特にナノスケールの構造体では自由表面が形成する反電場(強誘電性を減衰させる電場)や異材界面からの拘束が支配的となるため、強誘電特性が非常に存在し難い環境となっている。しかし、申請者はナノ薄膜においてマクロ材とは異なる原子配列が現れ、新奇な強誘電分極が保持されることを発見した。本研究では、ナノ構造体中に発現する新奇強誘電特性とその発現メカニズムを解明することを目的とする。 中核段階である平成24年度は、初年度に開発した大規模量子解析技術と構築した計算機環境により、様々な低次元ナノ構造体(典型的なものを選択・抽出:ナノ薄膜(2次元)、原子レベルでシャープな角部を有するナノワイヤや非対称薄膜を丸めたナノチューブ(1次元)、直方体形状を有するナノドット(0次元)等)の特性を原子/電子レベルから解析した。ナノワイヤやナノドットなど構造体の周期性が減少すると、構造体内部の分極分布が次第に強く渦状構造を形成するようになることが明らかになった(新奇強誘電特性)。すなわち、構造体の低次元性に強く依存することを解明した。さらに、分極構造の曲率が大きな部位では、バルク材とは異なる原子構造・化学結合や電子密度分布・局所状態密度を有することを明らかにした。こうした部位では、外力などの力学的な負荷に対して特に顕著に変化する傾向(マルチフィジックス特性)があることを示した。 また、強誘電特性が保持されるためには、表面によって誘起される反電場を抑制する機構が必要不可欠である。このため、量子解析における波動関数データから反電場を評価する技術を開発した。また、本年度購入した並列計算機を前年度購入した計算システムと同期できるように改造・調整を行い、開発した反電場評価手法を本計算システムに実装した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、様々なナノ強誘電体構造における新奇強誘電特性評価とその負荷に対する応答特性(マルチフィジックス特性)の解明、新奇特性発現メカニズム解明のための反電場解析プログラムと計算環境の構築であり、それらは研究実績欄に記載のとおり実施済みである。また、本成果は、Physical Review Letters, Applied Physics Letters, Acta Materialia等、著名な国際誌に掲載されており、本成果が国際的に認められていることを示している。以上より、研究は計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度構築した反電場解析プログラムを用いて新奇強誘電特性発現メカニズムの解明を行う予定である。比較的小規模なモデルに対して反電場を解析した結果、渦状分極構造をとることでナノ構造体内部の反電場が大きく緩和されている様子が確認できた。すなわち、反電場の緩和が鍵となっていることが予見された。次年度は、これを様々なナノ構造体に適用することで新奇特性発現メカニズムの解明が可能であると確信している。 また、研究代表者は磁性体についても基礎的な研究を実施しており、異種物性(磁性)と強誘電特性とのカップリング効果についても研究基盤を有している。以上のことから、次年度予定している研究内容についても問題なく遂行できると確信している。
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