2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23686025
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平方 寛之 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40362454)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ構造 / 界面 / 破壊 / クリープ / 材料強度 |
Research Abstract |
低応力、高温下において時間依存型の変形が進行し破壊に至るクリープの存在は良く知られている。クリープは応力を駆動力とする原子の拡散によってもたらされるため、高速拡散路である表面や界面の割合が極めて大きいナノスケールの材料は、バルクとは大きく異なる特性を示すと考えられる。一方、異材界面は、原子構造の不整合とともに力学的性質の不連続部でもあり、複雑な破壊が進行する箇所である。本研究では、次世代ナノデバイスの中核を担う寸法が10 nmオーダーの金属ナノ構造体の界面を対象として、クリープ界面強度実験法を開発するとともに、変形・破壊機構の解明を通じてクリープ界面破壊の支配力学を明らかにすることを目的とする。 本年度は、前年度にスパッタリングガンと基板温度制御装置を増設した動的斜め蒸着装置を用いて、反応性スパッタリングによりシリコン(Si)基板上に窒化シリコン(SiN)薄膜を製膜し、真空を破らずに電子ビーム蒸着を用いた動的斜め蒸着法によりチタン(Ti)ナノ構造を作製することにより、清浄界面を有するTi/SiN試験片を作製した。作製したナノ構造試験体に対して、前年度に整備した実験システムを用いてクリープ界面破壊試験を実施した。ナノ構造体の構造や負荷方法を変えることにより、力学条件を変えた試験を実施し、クリープ界面破壊に関する基礎データを取得した。一方、前年より実施しているTi/Si試験片に対するクリープ界面破壊実験を本格的に実施し、室温下においてTiナノコラムとSi基板の界面において時間依存型の破壊が生じることを明らかにした。さらに、Tiのクリープを考慮した有限要素法解析を実施し、クリープ界面破壊の支配力学について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ナノ構造のクリープ界面破壊実験の実施、電子顕微鏡観察による破壊機構の解明、それらを基にした応力解析を実施した。現在までの達成状況は以下の通りである。 (1)クリープ界面破壊実験: Ti/Si界面を有する試験体に対するクリープ界面破壊実験を実施した。とくに、Tiナノコラムの傾斜方向に対する負荷方向を変えた2種類の試験を実施することにより、Ti/Si界面端に生じる応力特異性を変えた試験を実現した。これらの結果を比較することにより、界面端部のナノスケールの特異応力場がクリープ界面破壊に及ぼす影響を明らかにすることができる。試験片は時間依存型変形を示し、TiナノコラムはSi基板との界面もしくはそのごく近傍で破壊した。さらに、現象の一般性について検証するため、導入した装置を用いて清浄なTi/SiN界面を有する試験片を作製した。Ti/SiN試験片に対するクリープ実験を実施し、同様に時間依存型の界面破壊が生じることを確認した。 (2)クリープ試験システムの拡張: ナノ構造試験片を用いた検討の結果、現行のオープンループによる荷重制御においても十分な制御が可能であることが判明したため、当初予定していたフィードバック荷重制御への拡張は見送った。一方、新たに温度制御ステージを導入し、ドリフトの影響をさらに低減した試験システムに拡張した。 (3)応力解析: (1)で得られたクリープ変位速度からTiのクリープ特性を推定し、クリープを考慮した有限要素法応力解析を実施した。応力解析には市販の有限要素法コード(ABAQUS)を用いた。その結果、界面端部のナノスケールの応力拡大がクリープ界面破壊に大きく影響を及ぼしていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究の最終段階であり、前年度までに整備した実験システムを稼働して、ナノ構造のクリープ変形、およびクリープ界面破壊に関する実験を引続き実施し、データの拡充を行う。また、Ti以外の材料(他の金属やセラミックス)によるナノ構造試験片を作製し、室温下におけるクリープ界面破壊現象の一般性について検討する。さらに、これらの実験結果を基に、ナノ構造体のクリープを考慮した力学解析を実施し、強度の支配力学則の構築を目指す。今年度は、Tiナノコラムがノートン則にしたがうクリープ材料であると仮定して、応力解析を実施したが、ナノ構造においては、表面拡散や界面拡散が大きな影響を及ぼすと予測している。このため、応力と拡散を連成したマルチフィジックス解析コードを開発する。実験より得られたナノ構造体のクリープ特性を記述できるクリープ構成モデルを構築するとともに、それを考慮したナノコラムと基板の界面破壊に関する力学解析を実施する。これらの結果を総合し、ナノ構造体のクリープ界面破壊の支配力学を明らかにする。
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