2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール熱制御を目指した近接場蛍光熱顕微鏡の開発とナノ構造制御への新しい展開
Project/Area Number |
23686036
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田口 良広 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (30433741)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 熱工学 / 近接場光 / 熱物性 / ナノパターニング |
Research Abstract |
本研究課題は、ナノ構造の温度分布を高精度にモニタリング可能な近接場蛍光熱顕微鏡を開発し、精緻な熱制御に基づく近接場光学熱脱離を利用した自己組織化単分子膜の熱的ナノパターニング手法を新規に構築することを目的としている。ナノレベルでリアルタイムモニタリングしながら近接場光学熱脱離によるソフトかつクリーンなナノパターニングが実現すれば、ナノ熱工学に基づく革新的材料創成を我が国から先導することが可能となり、ナノ熱工学システムデザインと呼べる新しい学際領域を拓くことができ、学術的にも工学的にも意義深い。平成25年度は、ナノ熱制御-構造制御用ハイブリッド近接場プローブの実現を目的として、高効率な近接場増強が可能なプローブ先端材質ならびに形状を明らかにした。さらにナノパターニング用基板を提案し、近接場光学熱脱離に必要不可欠な要素技術の融合を果たした。具体的な成果を以下に示す。 (1)近接場プローブ先端の材質をAgにすることによって、2波長の光に対して高効率に励起・集光可能であることをシミュレーションにより明らかにした。また、作製プロトコルを確立した。 (2)熱脱離を容易に誘起可能なナノパターニング用基板の構造を明らかにした。酸化膜を用いたメンブレン構造を用いることにより、プローブの損傷閾値以下の励起光強度で熱脱離温度に到達可能であることを明らかにした。また、プロトタイプを用いた実験により妥当性を明らかにした。 (3)近接場ファイバープローブの穴形状をFDTDシミュレーションにより解析し、励起効率が極めて高い形状を明らかにした。またフォーカスイオンビームによる加工プロセスのパラメータを決定した。 (4)これまでに開発した近接場光学熱脱離手法と温度計測手法の要素技術を融合するために、異なる波長の伝搬特性と自家蛍光等のノイズとの分離について解析的かつ実験的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は研究計画の全ての項目を達成しており、研究の進捗状況はおおむね順調に進展している。特に下記の研究項目に関しては、当初の計画以上に進展しており、極めて順調に研究が遂行されているといえる。 (1)12 nsのパルス型近接場加熱により、プローブの損傷が全くない高効率なパターニングが行えることを明らかにした。(2)バタフライ状のナノ構造をプローブ先端に形成することで、感度を飛躍的に向上できることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにナノ領域の定量的な温度計測を実現可能な近接場光学蛍光熱顕微鏡の開発と、近接場光学熱脱離によるナノパターニング技術の開発を行い、その研究進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。今後は、これら2つの要素技術を革新的に融合し、ソフトランディング用基板およびナノバイオ基板の2種類の基板に対して熱制御-構造制御の実現を目指す。
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Research Products
(9 results)