2013 Fiscal Year Annual Research Report
複雑数理工学が拓く燃焼不安定の非線形ダイナミックスの解明と工学的応用
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23686037
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
後藤田 浩 立命館大学, 理工学部, 准教授 (00434712)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 燃焼 / 非線形力学 |
Research Abstract |
燃焼は流動, 熱・物質拡散, 化学反応が相互に作用し合う複雑な非線形現象であることから, 複雑に変動する燃焼不安定の非線形ダイナミックスを明らかにしていくことは重要な研究課題の一つである. 特に, 近年体系化が著しく進んでいる非線形動力学の視点から燃焼不安定の非線形ダイナミックスを明らかにしていくことは, 基礎燃焼分野の新たな展開を切り開いていくだけでなく, 高度化する燃焼器の最適な設計・制御の開発にも大きく寄与すると思われる. このような視点に立って, 本研究は工学的・工業的に重要な低NOx型の希薄予混合ガスタービンモデル燃焼器で生じる燃焼不安定(希薄吹き消えや振動燃焼)を対象に, 燃焼不安定の非線形ダイナミックスを解明することを目的とする. また, 抽出された燃焼不安定の決定論的な特徴に基づいて, 燃焼不安定の予測・制御の可能性を明らかにすることも目的とする. 本年度では, 位相空間内の点成分の順列パターンに着目した順列エントロピーを導入し, 希薄予混合ガスタービンモデル燃焼器で発生する吹き消えの事前検知・回避を行うことが可能なシステムを構築した. また, 複雑なダイナミックスの短期予測可能・長期予測不可能の特徴を抽出する独自の方法論を提案し, 間欠振動のダイナミックスの特徴を明らかにした. 位相空間内の点の距離のパターンを定量化するリカレンスプロットを導入し, 間欠振動のダイナミックスに存在する秩序・非秩序構造の抽出も行った. レーリーインデックス法を導入することで, 渦崩壊とダンプ領域の再循環流との境界におけるせん断層不安定が振動燃焼の保持に重要な役割を演じていることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
力学系理論に基づいた順列エントロピー法によって燃焼ダイナミックスの複雑さを定量化し, 希薄吹き消えの事前事前・回避を可能とするシステムを構築した. さらに, 新しい非線形解析の一つであるマルチスケールエントロピー解析を導入することができ, 吹き消えのダイナミックスの一端を明らかにした. これらの成果は競争力の非常に高い第35回国際燃焼シンポジウム(採択率37%)の口頭発表に選ばれており, 現在, Elsever社が出版する学術誌Proceedings of the Combustion Instituteで査読中である. また, レーリーインデックス法の導入によって, 振動燃焼の保持メカニズムで重要となる圧力変動と熱発生率変動がカップリングする領域と研究概要で述べたせん断層不安定領域が対応することも明らかにした. このことは, 今後の研究の推進方策で進める燃焼振動の能動制御を行う上での重要な指針を与えるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度が本研究課題の遂行の最終年度となるが, 申請時の研究計画に記載されている燃焼制御を行うための基盤技術を構築する必要がある. レーリーインデックス法によって得られた知見に基づいて, 現在, 2次噴射燃料を用いた遅延フィードバック制御法の導入を試みている. 高速応答バルブを備えたシステムを導入する必要性はあるが, 振動燃焼の抑制を行うための基盤技術を構築しつつある.
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