2012 Fiscal Year Annual Research Report
窒化物半導体歪み補償量子井戸によるマルチバンド太陽電池
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23686048
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 正和 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90323534)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 太陽電池 / III-V化合物半導体 / 量子井戸 / 超格子 / 歪み補償 / in situ観察 / 窒化物半導体 |
Research Abstract |
InGaN/AlN歪補償量子井戸成長におけるウエハ曲率のその場観察について,レーザの入射本数を3本にして互いに直交する方向のウエハ曲率を同時に観察することで,成長時のウエハの回転に伴う曲率測定のノイズレベルを大幅に削減することに成功した.これにより,InGaN/AlN量子井戸の歪み補償をさらに精緻に調整することが可能になったので,量子井戸の層厚を系統的に変化させ,平均歪みのゼロからの微妙なずれが,X線回折におけるサテライトピークの鋭さ,フォトルミネッセンス強度に与える影響について精査した.その結果,平均歪みがGaNテンプレートに対して伸長方向にずれる場合,サテライトピークは鈍くなり,フォトルミネッセンスは500~700 nm付近にブロードな発光を示すようになった.これは,InGaN井戸のなかでIn組成が局所的に高い領域が生じて,発光がブロードバンド化しているものと考えられ,伸長歪みの蓄積はInGaN/AlN量子井戸の規則的な成長を阻害することいえる.良好な鋭いサテライトピークと,強い発光を示すInGaN/AlN量子井戸は,平均歪みが若干圧縮側にずれたときに得られた.ただし,この圧縮歪の大きさは,従来のInGaN/GaN量子井戸に比べれば一桁以上小さなものであり,AlN障壁層による歪み補償が高品位な量子井戸を成長するために有効であるという結論に変わりはない.ただし,上述のようにAlN層に印可される伸長歪みが良質なInGaN結晶成長を妨げる傾向があるといえる. このように得られたInGaN/AlN量子井戸を太陽電池に応用するための第一歩として,まずはGaNのp-i-n構造に量子井戸を挿入し,LEDとしての特性を評価した,従来のInGaN/GaN量子井戸に比べて,AlNの大きなバンドギャップに由来すると思われる若干の順方向電圧増大が見られたが,問題なく電流注入発光が観察できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の新規な点であるInGaN/AlN歪み補償量子井戸については,本年度の実績に述べたように,精緻な歪み補償による高品位結晶成長が可能になった.これは,高精度なin situウエハ曲率観察システムを導入して詳細な歪み補償の調整が可能になったことと,従来申請者が用いていた有機金属気相成長装置で問題となっていたキャリアガスに含有される不純物の影響を純化装置の導入により除去し,水分等不純物の影響を受けやすいAlNを高品位で成長可能になったことに由る. 次のステップは量子井戸を横切るキャリア輸送であるが,すでにLED構造による電流注入発光は観測されているので,順バイアスを印加した条件においてはキャリア輸送が可能になったといえる.一方,無バイアス,光照射条件でのキャリア取り出し過程に関しては,量子井戸光検出器型の試験デバイスを作製して検証を試みているが,今のところ良好な結果が得られていない.引き続き,デバイス構造を再検討して取り組む.
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Strategy for Future Research Activity |
InGaN/AlN歪み補償量子井戸からの光励起キャリアを取り出し,太陽電池として動作させるために,キャリア取り出し素過程の解析を行う.まずはn型層にサンドイッチされた量子井戸を用いた光検出器構造での光電流検出に取り組む.次いで,太陽電池として動作するp-i-n構造に量子井戸を挿入し,まずは逆バイアス下での光電流検出に取り組む.同時並行で,サンプルに対して強力な可視-赤外背景光を照射しながら単色光入射時の光電流を検出するための新規量子効率測定系を構築し,目的とする2段階光子吸収による光電流のい検出を目指す.
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