2012 Fiscal Year Annual Research Report
太陽電池の効率向上へ向けた光電変換材料でのフォトニック結晶効果の探求
Project/Area Number |
23686050
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨士田 誠之 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40432364)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | フォトニック結晶 / 光電変換材料 / 光吸収 / 光捕獲 / 光閉じ込め / 太陽電池 |
Research Abstract |
フォトニック結晶は固体結晶と同様に周期性をもち,光のエネルギーに対するフォトニックバンドが形成され,光モードの制御が可能になる.本研究課題の対象となる太陽電池は,光電変換材料において光を吸収し,キャリアを発生させることで,光を電気エネルギーへ変換するデバイスであり,いかに光の捕獲・吸収を効率よく行うかが,重要なポイントである.今年度は,フォトニック結晶による光閉じ込め効果と材料自身の光吸収効果のバランスを取る際に最大の吸収効果が得られるという昨年度得られた設計指針に基づき,まずはフォトニック結晶の構造は一定にしたまま,フォトニック結晶を構成する半導体材料のキャリア密度を変化させることで材料自身の吸収効果を変化させることを検討した.フォトニック結晶の効果としては,外部からの入射光との結合が可能であり,フォトニック結晶面内全体での共振が得られるフォトニックバンド端効果が得られるような円孔正方格子構造を採用した.半導体中の自由キャリアによる光吸収効果をドルーデモデルで取り込んだ電磁界シミュレーションを行った結果,フォトニック結晶中において光が閉じ込められる光子寿命と光吸収係数で光子が失われる光子寿命が一致した整合条件において,フォトニック結晶中の光吸収割合が最大になり,これは,モード結合理論による解析結果とよく一致した.実際にシリコンを用いて,フォトニック結晶を作製し,信号発生器・広帯域ソースを用いて,作製したサンプルの評価を行ったところ,設計した共振条件にて,光吸収の増大を観測することができた.また,フォトニック結晶をもつ薄膜シリコン光電変換層をもつ光電変換デバイスの作製も行い,フォトニック結晶による約20倍の光電流の増大を観察することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度までに得られた基礎理論,フォトニック結晶による光閉じ込め効果と材料自身の光吸収効果のバランス,に関する一般的な設計指針を受けて,フォトニック結晶による光吸収効果増大の実証へ向けた具体的な構造を電磁界シミュレーションで探求していくことを第一の目標としていた.フォトニック結晶として,外部からの入射光との結合が可能であり,フォトニック結晶面内全体での共振が得られるフォトニックバンド端効果が得られるような円孔正方格子構造をシミュレーションの結果,得ることができた.そして,材料固有の吸収効果も最終的にフォトニック結晶効果を発現させるにあたり,重要なパラメータであることが判明したため,半導体中のドーピング量で変化させて,検証することを考えた.具体的な材料として,太陽電池の代表的材料であり,間接遷移型であるため,光吸収の一層の改善が期待されるシリコンを用いたシミュレーションにて,前述のフォトニック結晶の光閉じ込め効果に整合するキャリア密度の条件を導くことができた.そして,実際にシミュレーションで得られた構造を作製し,光吸収の増大を観察し,原理検証をすることができ,先に挙げた目標に達成することができた.さらには,フォトニック結晶光電変換素子の試作も進め,単なる光吸収増大ではなく,光電流の増大という,太陽電池にもつながるフォトニック結晶デバイスの動作まで実現するなど,研究実績の概要にも示すように,本研究は当初の計画以上に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,本研究で見いだされたフォトニック結晶の太陽電池への応用に向けて,太陽光のような広い波長範囲をもつスペクトルにも応用可能な設計方法を見いだすことを目指していく.これまでに得られたフォトニック結晶による光閉じ込め効果と材料自身の光吸収効果のバランスに関する理論および設計指針と,その原理実証実験の結果を受けて,フォトニック結晶を構成する格子点の大きさ,深さ,格子形状,および,光電変換層の厚さといった構造パラメータを最適化することで,光吸収効果とのバランスの取れたフォトニック結晶を作用させることができる光モードを複数発生させることで,できるだけ広い波長範囲におけるフォトニック結晶による光吸収の増大を目指す.そして,これまでに引き続き,光吸収率の電磁界シミュレーションによって,具体的なフォトニック結晶構造を探索していく.材料系としては,昨年度同様に太陽電池の代表的材料であり,間接遷移型であるため,光吸収の一層の改善が期待されるシリコン系材料を用いることにする予定である.その結果,本研究課題の対象となる太陽電池において,光電変換材料において光を吸収し,キャリアを発生させることで,光を電気エネルギーへ変換する効率を高めることにつなげたい.そのため,いかに光の捕獲・吸収を効率よく行うかが,重要なポイントであり,光の捕獲・吸収効果をフォトニック結晶で制御するための設計指針を明らかにしていく.
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Research Products
(7 results)