2013 Fiscal Year Annual Research Report
高耐圧化CMOS回路のMEMS集積で創るエネルギー自立型分散水上走行素子
Project/Area Number |
23686053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三田 吉郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40323472)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | MEMS / VLSI / 自律分散 / オンチップ太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
水上走行する小型の昆虫類に着想を得て、環境から電気エネルギーを収集する回路によって動力を得て水上を移動することができる、エネルギー自立型の超小型(1cm以下)アクチュエータ素子を実現し、更に複数のチップによって整列、順序入れ替えなどの協調動作デモンストレーションを行なう。上記トップダウン研究により、自律分散マイクロシステムの研究分野に基本素子が自走し組み換えが可能という新規概念を提供し、実現の過程で集積化マイクロシステム(MEMS)向け集積回路(VLSI)ポストプロセス後加工技術の新たな展開に資する要素技術のボトムアップ的な革新的成果を得る。 本研究は4つのタスクによって、(1)環境から取り出した電気エネルギーを用いて(2)自走し、(3)隣接素子間でコミュニケーションを行なって、(4)協調動作を創発する、MEMS融合VLSI素子の実現を目指す。 3年目終了時点で、目標成果物(Task 1)10V級EWODアクチュエータを電圧変換器無しで駆動可能とするオンチップ高電圧発生素子、(Task 2)水面に浮かび、チップに抱かせたバブルレット(小泡)の形状を切り替えて推力を発生する、表面張力制御型アクチュエータ素子と制御回路、制御手法、(Task 3)データ通信を行なう近傍素子通信回路とプロトコル、(Task 4)個々の自立水上歩行素子の協調によって、意味のある動作を行なわせるための自律分散アルゴリズムのうち、特に(Task 1)のプロセス技術をほぼ完成できた。 与えられた所要電圧と電流を生成可能なオンチップ太陽電池の具体的な設計手法が明らかになった。特に、直列太陽電池の弱点である電圧降下の問題を解決するためにはバイパスダイオードの集積化が有効であることを定量的に示すことができ、また、オンチップ太陽電池をMEMS素子と接続して遠隔電送駆動のデモンストレーションを行なうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目までは、背面を絶縁したSOI(Silicon on Insulator)型のシリコンウエーハに作製した直列P-N接合を、CMOS後加工(ポストプロセス)によってメサ型の素子分離を行なうことによって、高電圧化することが可能であることを単純に示したに過ぎなかったが、3年目の研究試作の成果によって、定量的な議論が可能となった。そもそも直列接続を行なった太陽電池においては、最も生成電流の小さいセルによって全体の電流が律速される。従って、直列接続した素子の全てに等しく光が照射されなければ効率よく動作しない。このため、大電力を扱う太陽電池応用では、バイパスダイオードを用いて発電の行なわれないセルをバイパスするという手法が取られているが、本研究によって、オンチップ太陽電池においても同様の手法が有効であること、太陽電池で生成する電流とバイパスダイオードの順方向電流の関係を吟味すると、太陽電池に比べて遥かに小さい領域のダイオードを用いるだけで目的が達成されることが示された。得られた素子を静電駆動型のMEMS素子に接続し、外部から光を照射することでアクチュエータの駆動を行なうことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
(Task 1)については、静電負荷を充電する電池としての完成をみたが、実際のMEMS応用のためには、充電した電荷を強制的に放電する回路の集積化必要であることが実験結果から示唆された。面積ペナルティを最小限にとどめながら、電荷を放電する回路を集積化することを試みる。(Task 2)については、武田先端知ビルのナノテクノロジー・プラットフォームのクリーンルーム環境を研究者自ら先頭にたって整備した結果、成膜から加工まで、他所に頼らずとも素子作製に関する実験が行なえるようになってきたので、光によりEWOD駆動が可能なマイクロアクチュエータの設計試作に取り組む。単体素子同士をまずは外部で結線して駆動する実験から始め、続いて高密度配線による素子の集積化を試みる。素子の完成をまって、(Task3)隣接間コミュニケーションならびに(Task4)協調動作の研究を行ない、完成させる。
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Research Products
(6 results)