2012 Fiscal Year Annual Research Report
異種半導体界面制御に基づく高効率Cu2ZnSnS4薄膜太陽電池
Project/Area Number |
23686056
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
峯元 高志 立命館大学, 理工学部, 准教授 (80373091)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高効率太陽光発電素子 / 結晶成長 |
Research Abstract |
Cu(In,Ga)Se2 が低コスト・高効率な化合物薄膜太陽電池の光吸収層として大きな注目を集めている。Cu(In,Ga)Se2 太陽電池は20%と高変換効率であるが、材料に希少元素のInとGaを使用しており、またSe を使用するため環境負荷が懸念される。そこで、In とGa を資源が豊富なZn とSn で、Se をS で置き換えたCu2ZnSnS4(CZTS) が大きな注目を集めている。本研究では、変換効率10%の実現を目指す。本年度は、昨年度の課題であったCZTS薄膜のドーム状の欠陥の抑制について検討した。従来はCu2ZnSn合金ターゲットを用いたスパッタ法により成膜したCu-Zn-Sn前駆体膜を、硫黄雰囲気下で熱処理することによってCZTS薄膜を成膜していた。前駆体からCZTSへと反応が起きる際に、体積膨張に起因する応力によってドームが発生すると考えた。この堆積膨張を緩和するために、酸化物前駆体を用いる事を考案し、前駆体のスパッタ時にアルゴンと同時に酸素を導入する事で、Cu-Zn-Sn-O前駆体を形成した。X線回折結果からこの前駆体膜はアモルファスであることがわかった。この前駆体を従来と同様に硫黄雰囲気下で熱処理した。その結果、前駆体に含まれる酸素が硫黄と置換されてCZTS薄膜が得られた。エネルギー分散型X線分析装置で酸素量を測定したところ、検出限界以下であった。また、急激な体積膨張が抑制されたためか、ドームの形成を抑える事ができた。一方、表面側は良好な結晶が得られたが、裏面側では粒径の小さな未反応のような結晶粒が観察された。今後は、前駆体膜の成膜条件とともに硫化条件の最適化を行う事で、太陽電池に適したCZTS薄膜の実現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜厚2ミクロン程度かつ表面にドーム状欠陥のないCZTS薄膜を形成することに成功した。一方、表面側は良好な結晶が得られたが、裏面側では粒径の小さな未反応のような結晶粒が観察された。今後は、膜質の更なる向上が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、まず急務となるのが太陽電池級のCZTS薄膜の形成条件の確立である。CZTSでは元来平坦な膜を形成することが難しいが、H24年度の成果で酸化物前駆体を用いる事でドーム抑制に成功している。また、これと並行して硫化水素を用いて長時間の硫化を行う事でもドーム形成が抑制できることを見出している。これらの前駆体、硫化条件・方法の最適化を行い、まずは、従来のCdSバッファを用いてCZTS太陽電池を作製する。太陽電池級のCZTS薄膜の形成技術の確立後、既に条件出しがほぼ完了している新型バッファ層を用いて、異種半導体界面制御を行ったCZTS薄膜太陽電池を作製する。
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