2011 Fiscal Year Annual Research Report
Vapor‐Assisted低温大気圧接合による有機・半導体薄型基板の一括混載
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23686057
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
重藤 暁津 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (70469758)
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Keywords | 接合 / 低温 / 大気圧 / 実装 / ヘテロインテグレーション / インターコネクト |
Research Abstract |
光学特性測定評価装置を用い,ガラス,石英,PDMS(ポリジメチルシロキサン)などの無色透明材料のバルク材表面ならびにこれらの材料をvapor-assisted手法で接合した界面について,接合界面での光透過性を調査した.前年度までに,これらの材料の初期表面改質においては,高真空雰囲気でのアルゴン高速原子ビームを使用することを予定していたが,ビーム照射が材料表面の化学結合状態に及ぼす影響を調査している経緯において,大気中で実施可能な紫外光照射プロセスでもアルゴン高速原子ビームと同様の水分子吸着能とその後の架橋分子層形成が可能であることが実証されたため,その基礎データを蓄積することを優先し,光学特性測定を繰り越した次第である. 架橋分子層を形成し,異種材料を低温大気圧接合する技術においては,界面の物性制御性が課題となる.特に,バイオセンサや導波路基板へのアプリケーションが期待される透明材料どうしの接合においては,接合界面での高い光透過性や波長制御性が求められる.製作した光学特性測定装置は,可動ステージ(XYZθ)・タングステン光源(必要に応じて重水素光源),検出器,専用制御系が一体型で構成されており,光軸を変えないまま任意で透過・反射測定を切り替えることができる.サンプルには紫外から近赤外(300~900 nm)波長の光を照射し,可視光全範囲の測定が可能である. 上記の無色透明材料については,本装置の設置完了前から性能評価の目的で試験的に光学特性測定を実施した.その結果,PDMSどうしの低温大気圧接合界面においては,ほぼ全波長域において,同厚のバルク材料と比較して透過率損失が5%以内にとどまり,vapor-assisted接合手法の有効性を実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,平成23年度に予定していた検討項目事項は次の通りである:1) 架橋性薄膜形成条件のX線光電子分光法(XPS)などを用いた最適化,2)単純基板試料の接合ならびに透過電子顕微鏡(TEM)や電子エネルギー損失分光分析(EELS)による界面微細構造解析,3) 基礎的な電気的信頼性試験. 1) については,前述の通り,当初予定していた以外の有効な初期表面改質手法(紫外光照射併用)の有効性を見いだした.これにより,低温混載接合プロセス全体を大気圧で実施することが可能になり,有機・生体親和性材料への応用を考えた場合の対真空性,装置簡易性,低環境負荷性への貢献が大きいと考えられたため,光照射が材料表面結合状態に及ぼす影響の調査と,水分子導入による架橋形成挙動の明確化を優先した.2) については,まず上記の検討で明らかになった界面制御条件を用い,各種資料の低温大気圧混載接合実験を行った.その後TEM,EELSで微細構造観察を行い,厚さが良好に制御されたアモルファス状の架橋層を介してボイドなく強固な結合が得られていることを明らかにした. 以上のように,研究遂行中に新たに発見された知見に基づき,1),2)に関連した研究手順を一部変更した.そのため,応用可能性に関連した分光エリプソエータによる光学特性評価や3)の電気的信頼性試験は次年度以降に繰り越すこととしたが,おおむね全体の研究計画と同等の進行を呈していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
従来のアルゴン高速原子ビームを用いた手法に加え,紫外光照射を併用した大気圧低温混載接合手法の適用可能材料の範囲を拡げる.また,前年度に実施しなかった接合性能評価,機械的・電気的性能評価,ならびに応用可能性を検証するための試料設計を行う.検討対象の材料は,ガラス,石英,PDMS,Cu, Tiとする.具体的な内容は以下の通りである. 1)紫外線照射条件が表面化学結合状態に及ぼす影響の調査(前年度からの続行),2) 1)の試料の150℃以下,大気圧雰囲気での混載接合実験,3) TEMやEELSを用いた2)の界面微細構造の経時的変化観察,4) 繰越分で製作した光学特性測定装置を用いた2)の界面における光透過性・反射率測定の架橋分子層厚との関係の測定,5) 金属試料接合界面における架橋分子層の厚さと導電性の関係の明確化,6) 透明樹脂基板にキャビティなどの立体構造を形成し,光導波性能の調査をするための試料を設計する. 2)の検討のためには,紫外線光源を有する圧接チャンバを製作する.5)については金属薄膜電極を形成し,接触抵抗率の測定や高温保持試験による信頼性検討を行う.6)については,立体構造側面における光損失を最小限にするための加工法検討など,試料制作のための調査を行う.これらの内容は研究の進捗状況に対応して変更可能である.
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Research Products
(8 results)