2012 Fiscal Year Annual Research Report
抗原応答性ハイドロゲルに基づく匂いセンサの高感度化とその応用
Project/Area Number |
23686062
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小野寺 武 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (50336062)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 匂いセンサ / ハイドロゲル / ポリマー / 抗原抗体反応 / バイオセンサ / 表面プラズモン共鳴 |
Research Abstract |
ポリビニルアミン(poly-VAm)を用いて3次元的なセンサ表面を作製した. 抗トリニトロトルエン(TNT)抗体の結合量は従来の5倍程度になったが非特異吸着を起こすことが分かった. ウシ血清アルブミンとリゾチームの吸着実験からセンサ表面はプラスに帯電していることが分かった. 帯電の原因はポリビニルアミンの未反応のアミノ基だと考えられ, 作製時のポリビニルホルムアミドの加水分解率を減少させることで未反応アミノ基を減らし帯電の抑制を試みた. その結果, 加水分解率の低いポリマー(poly-(VAm-co-NVF))で非特異吸着を抑制できることが分かった. 加水分解率23%のポリビニルアミンを用いてセンサ表面を作製しTNT濃度を測定した. その結果, 高感度な測定ができ, 検出限界は28 pptとなった. 抗原応答性ハイドロゲル形成のため,poly-VAmのアミノ基をカルボキシル基に変換する条件の検討を行った.その結果,無水コハク酸を用いてpoly-VAmのアミノ基をカルボキシル基に変換,抗体の固定化が可能となった.表面プラズモン共鳴センサにより,ポリマーへの抗体の結合が確認できた. SPRセンサ表面にハイドロゲルを形成する新規な手法として,表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)の適用を試みた.複数種のモノマーを用いて非特異的な相互作用の少ない表面を作製することができた. センサ応用を目的として,SPRセンサにより,爆薬のRDX,催涙剤として用いられるカプサイシンの測定を試みた.間接競合阻害法により,それぞれ,検出限界は40 ppt,150 ppbとなった.また,小反芻獣疫ウイルスや抗生物質であるシプロフロキサシンの検出についても検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリビニルアミンの非特異的な吸着が判明し,その原因究明と対策を行った.ポリビニルホルムアミドの加水分解率と非特異吸着との関係を明らかにし,SPRセンサにおいてトリニトロトルエン(TNT)に対する応答特性を取得した.これらの成果について,論文にまとめ,学会発表,国際会議での発表,および学術雑誌への論文投稿を行った.投稿した論文は採択されるに至った. 並行して新規なハイドロゲル形成の手法として,文献調査から得られた知見を元に,表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)の検討を開始した.ポリマーの長さや密度などを変え,SPRセンサにおいて,TNTの検出限界との関係を詳細に調べ,学会発表を行った.論文にまとめ,投稿の準備を行っている. 抗原応答性ハイドロゲルの抗体固定側ポリマーについてはやや遅れて検討を開始した.しかしながら,新規なハイドロゲル形成手法の考案もあり,全体として研究は,公表成果も増えており,順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
抗体は,抗原応答性ハイドロゲルにおける架橋点となるため,抗体の結合数が応答性に大きく寄与すると考えられる.そのため,抗体を結合したポリマーの作製では,抗体の結合数を検討する.抗体の安定的な固定のため,無水コハク酸を用いてポリビニルアミン(Poly-VAm)のアミノ基をカルボキシル基へ変換する.抗体の固定化量は,ポリビニルホルムアミドの加水分解率によりコントロールする. Poly-VAm,poly-(VAm-co-NVF)などを用いて,SPRセンサチップ上に抗原応答性ハイドロゲルを構築し,匂い分子(例えばTNT)水溶液の測定を行い,応答特性を取得する.定濃度ガス発生装置を用いてTNTガスを発生させ,SPRにセットした金チップ上のハイドロゲル表面を通過させ,気相状態のTNTの直接測定を試みる.ゲルの湿潤状態の評価を行い,場合によっては,グリセリンやエチレングリコールなどの保湿性の高い物質を添加する.あるいは,ゲルによる水分供給用のリザーバーを作製し,保湿状態を保つ工夫を行う. 表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)を用いる手法では,まずセンサ表面のポリマー密度と抗体結合量,結合速度定数,検出限界の関係を調べる.SI-ATRPにより,抗原類似物質結合部位,抗体結合部位を形成し,SPRセンサ表面上で,抗原応答性ハイドロゲルの形成を試み,匂い分子(例えばTNT水溶液)の測定を行い,応答特性を取得する. ウイルス,RDX,カプサイシン,抗生物質,その他の匂い物質検知への応用を検討する.
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] Environmental Sensing System
Author(s)
T. Onodera
Organizer
Environment Technology Workshop 2012, National Environment Agency, Singapore (NEA) and Japan Science and Technology Agency(JST)
Place of Presentation
Orchard Parade Hotel(シンガポール)
Invited
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[Presentation] Development of SPR Biosensors for Viral Pathogens
Author(s)
P. Singh, R. P. Singh, K. K. Rajak, T. Onodera, V. P. Singh, S. Kumar
Organizer
National Symposium on Frontier of Biophysics, Biotechnology and Bioinformatics (37th Annual Meeting of Indian Biophysical Society (IBS)
Place of Presentation
University of Munbai(インド)
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