Research Abstract |
本研究では,リスクマネージメントの観点からCO_2,放射性廃棄物の地層処分施設におけるセメント系材料の長期安定性の評価を行うことを目的としている.本年度は,研究連携をしているOxand社とともに,CO_2注入およびメンテナンス時における地下600m,2mの坑井の力学的な安定性を熱構造連成FEMで検討を行った.その結果,坑井の鋼管の偏心が40%以下であれば,CO_2注入によるセメントペーストのひび割れの可能性は小さいが,70%以上の偏心があると,ひび割れ発生のリスクがかなり高くなることが分かった.また,オイルセメント以外のポルトランドセメント,フライアッシュ混入セメントの坑井適用性を実験,解析の両面から検討した結果,高温環境ではオイルセメントの方が適用性は高いことが分かった.地熱の高い地下2000mに温度の低いCO_2を注入すると,セメントペーストと周辺土壌との間に隙間ができることが解析によって示唆されたが,その大きさは十分に小さいことが分かった. 放射性廃棄物処分施設については,廃棄体の発熱によって,混和材を用いた場合,表層に目視で確認できない微細ひび割れの発生,ナノメートルスケールでの空隙構造の変化など高温環境特有の現象が発生し得ることが分かった.超長期の劣化予測においては,こうした微視的な挙動が大きな変動をもたらし得ることから,透水・透気,カルシウム溶脱に与える影響について,実験による検証が必要であることが分かった. また,研究連携者とともにフランスのIFSTTAR, Andra, Oxandを訪問し,フランスにおける確率論を用いた劣化予測手法,放射性廃棄物処理に対するセメントバリアの要求性能についての知見を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
二酸化炭素地下貯留の解析についてはおおむね順調に進んでいる一方で,9月にフランスから帰国したため,本学での実験的な検討がやや遅れている.放射性廃棄物処分施設のセメントバリア性能の検討も,高温特有の微細ひび割れ発生,空隙構造変化についての知見を得たものの,長期性能に与える影響の検証が達成できていないため,研究連携者とともに実験,解析の両面からの検討を行う予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度である本年度は,開発中の各予測モデルの組み合わせを試みる.CO_2地下貯留については,前年度CO_2注入,メンテナンス時の坑井の力学的な安定性を検討した熱構造連成解析に,化学劣化,時間依存変形の予測モデルを組み込むことが課題として挙げられる.また,国内外の複数のカルシウム溶脱予測モデルに,周辺環境の変動を反映した確率変数を導入し,申請者,研究連携者とともに実施する実験結果と比較検討することで,放射性廃棄物処分施設の劣化予測において利便性が高く,汎用性のあるモデルを選択,開発する.以上のモデルを用いて,各劣化事象の発生確率を求め,各処分施設において与えるインパクトを検討し,安全性,使用性などのリスクマップを作成し,各地層処分施設のセメント系材料のリスク評価を行う.
|