2012 Fiscal Year Annual Research Report
降雨粒径分布のリアルタイム推定による最新型偏波レーダー雨量計の開発
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23686072
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 弘誠 京都大学, 防災研究所, 助教 (90551383)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 水文気象 / 自然災害 / 偏波レーダー / 雨滴粒径分布 / 降水量推定 |
Research Abstract |
(1) 降雨粒径分布の同期観測(本観測): 降雨粒径分布に焦点をあてた偏波レーダー・マイクロレインレーダー・ビデオゾンデの同期観測を、滋賀県信楽町にて、平成24年10月および平成25年7月に実施した。本年度は昨年度の準備観測をベースに、係留ビデオゾンデ観測を加えた本観測を実施した。観測対象は、寒冷前線に伴う降水システムであった。偏波レーダーの3次元立体観測による各種の偏波観測値、マイクロレインレーダーによるドップラースペクトルの鉛直分布、ビデオゾンデによる鉛直方向の雨滴粒径分布、の同期観測データを取得した。 (2) 雨滴粒径分布の立体構造の解明: 降雨粒径分布の推定手法として昨年度独自開発している、Xバンドレーダーで観測される位相差変化率を用いた粒径分布推定手法を用いて、主に対流性雲内の雨滴粒径分布の時間・空間構造を調べた。対流性降雨は、DSDが時間的・空間的に大きく変動し、さらに鉛直方向の変動も大きく、対流性降雨のうち発達した局所的豪雨では上空でセルが発生・発達し雲水量が増加したのち雲水量の多い領域(コア)が落下する様子まで確認できた。層状性降雨については、空間的・時間的にDSDの変動は少なく、ほぼ一様に分布した細かい雨が降り続きながら、一部では雨滴の併合によりやや強く降る。層状性降雨のうち強く降る領域では、上空に向かい柱状にD0と雲水量が高く、その寿命は長い。対流性降雨のような激しい変化ではないが,雨滴の併合により地上付近ではD0は上空と比較して徐々に増加する傾向にあることを示した。 (3) 偏波レーダーから推定される雨滴粒径分布の誤差評価: これまで推定が難しいとされてきた強雨事例について、D0の精度検証を行った結果、相関係数が0.4、二乗平均誤差が0.6mm、であることを評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた目標を全て予定通り、研究を進めることができた。 雨滴の粒径分布に関する様々な測器の観測は、特に実際の落下中の雨滴を撮影できるビデオゾンデを取り入れたことで、他に類を見ない貴重なデータを取得した観測となった。強風などによる係留ゾンデ観測の難しさを知り、観測を2回に分ける形となったが、無事に成功したことは大きな成果である。また、Xバンドレーダーを用いた高解像度・高時間分解能の雨滴粒径分布を解析することで、様々な特徴を知ることができた。これはモデル開発の上でも、将来的な観測・監視の上でも寄与するところが大きいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
陽的に雨滴粒径分布を考慮に入れた降雨量推定手法の開発を行うため、雨滴粒径分布の時間発展モデルを用いて、落下中の凝結・蒸発、併合などの雨滴粒径分布の変化を表現し、観測データを取り入れることで高精度な降雨量推定を行う。
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Research Products
(7 results)