2011 Fiscal Year Annual Research Report
自己治癒機能を有する繊維補強セメント系複合材料の開発と適用
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23686078
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西脇 智哉 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (60400529)
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Keywords | 建築構造・材料 / 構造・機能材料 / コンクリート / 自己治癒 / 長寿命化 |
Research Abstract |
平成23年度は、繊維補強セメント系材料(FRCC)を対象として、使用材料の物性とFRCCに見られるひび割れの自己治癒メカニズムとの関連性について、また、この知見に基づく材料設計手法の提案に重点を置いて検討を行ってきた。PVAをはじめとする有機繊維を補強繊維として取り上げ、これらについてパラメトリックスタディを行うために複数種類のFRCC供試体を作製し、施工性や力学特性について確認した。そのうえで、水分の供給によって得られるひび割れの自己治癒(閉塞)状況を確認した。その評価として、透水試験によって透水係数を測定したほか、マイクロスコープやSEMによる観察を行い、漏水の有無や透水量の多寡だけではなく、ひび割れ部分で生じる析出物そのものの組成や、ひび割れ破面の形状などを計測し、析出プロセスと自己治癒性能の関係を確認した。 その結果、極性を有する有機繊維を用いたFRCCにおいて大きな自己治癒のポテンシャルが得られたこと、また、繊維の化学的な特性だけでなく、FRCCとして靭性的にふるまうような力学特性とも有意な関係が確認された。すなわち、自己治癒現象のポテンシャルは使用材料の化学的な特性だけでなく、力学特性にも影響を受けることが確認された。これは、自己治癒機能を最大化するために、FRCCの要素材料と調合設計を決定する際の基礎知見で考えられる。これに加えて、PVAを液体化して混和剤として用いる調合や、フライアッシュをはじめとする各種の混和材についても検討を行い、自己治癒に特化したFRCCの調合設計を行い、供試体レベルでの評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、使用材料とFRCCの自己治癒性状に関するパラメトリックスタディを行い、当初考えていた化学的な特性以外にも要因を発見して自己治癒に効果の高い調合設計を行うなど、概ね良好な結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、補強繊維や混和材料などの評価を行い、自己治癒に特化した形でのFRCCの調合設計について検討する。これまでは水中養生によってひび割れの自己治癒を促し、そのポテンシャルを評価してきたが、より実践的な状況を想定して、雨水程度の制限された水量に暴露された場合や、凍害などの劣化環境下に暴露された場合の自己治癒現象についても検証を行う。また、これまでの透水係数を評価指標から、より緻密な自己治癒層の評価のために、透気試験機を導入して透気係数を評価指標に加える。その他、実用化検討に向けた実大パネルの作製は平成25年度に予定しているが、そのための予備実験にも着手する。
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