2012 Fiscal Year Annual Research Report
自己治癒機能を有する繊維補強セメント系複合材料の開発と適用
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23686078
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西脇 智哉 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60400529)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 建築構造・材料 / 構造・機能材料 / コンクリート / 自己治癒 / 長寿命化 |
Research Abstract |
発生したひび割れを自ら修復可能な繊維補強セメント系複合材料(FRCC)の開発を目的として検討を行ってきた。平成24年度には、平成23年度に引き続き自己治癒効果を高めることのできるFRCCの調合設計を中心に検討を行った。前年度の繊維種類を主眼とした検討に加えて、繊維の断面形状や表面処理などによる効果ついても検討を行い、有機繊維の親水性を改善することによって自己治癒効果の改善を期待できることが確認できた。併せて、例えば液状PVA混和剤や石灰石微粉末などの混和材を用いることによって、ひび割れ面への炭酸カルシウムの析出を促進させる効果が確認できた。養生条件の違いについても検討を行い、これまでの水中浸漬に加えて、乾燥と水中浸漬を交互に繰り返す条件下においても実験を行った。その結果、PVA繊維を用いた場合などの自己治癒性状に優れたFRCCとした場合には、厳しい乾燥条件が加わった中でも一定程度の治癒が期待できることを確認した。ただし、凍害などの劣化環境下を想定した実験は、実験機器の導入が後述のように予定よりも遅れたため、十分な検討を行うことができなかった。 また、平成24年度は前年度までの透水試験による自己治癒効果の検証に加えて、平成24年度予算によって導入したトレント式透気試験機によって、気密性にも回復効果が見られることを定量的に確認することができた。この検討の中では、従来の知見では自己治癒に効果があるとは考えていなかった金属製の補強繊維を用いたFRCCであっても、超高強度を志向した低水セメント比かつ微細ひび割れによるひずみ硬化を見せるような調合とした場合には、ひび割れ幅を十分に小さく抑えることによって自己治癒効果を発揮し、気密性能を回復することが期待できるものと確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、当初より予定していたFRCCの調合設計に関して、繊維の形状や表面処理などについての検討から優れた自己治癒性能を確認することができた。また、PVAを補強繊維としてだけでなく混和剤としても利用することや、石灰石微粉末などの混和材の利用によって自己治癒ポテンシャルを高めることができるなど、新たな知見を得ることができている。暴露環境の差による自己治癒効果の影響についても実験を重ねており、自然環境下においての性状を把握することで実用化への知見を着実に積み上げている状況にあると考えている。加えて、当初は想定していなかった鋼繊維を用いたFRCCにおいても、高い自己治癒効果を確認することができるなど、想定していたよりも進展が見られた部分もある。ただし、その一方で、平成24年度開始当初予定していた凍害環境下における自己治癒性能の評価については、研究資金の制限から凍結融解試験装置を極力小型・簡素化した特注品として導入しることとしたため、装置の作製および設置の双方に手間取り、平成24年度内にはごく簡単な予備実験のみを実施するにとどまった。これらを総合して、概ね予定していた範囲内の成果は挙げられているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の最終年度となる平成25年度には、これまでに行ってきたより高い自己治癒ポテンシャルを持つFRCCの材料設計について引き続き検討を行う。この際に用いる評価軸としては、従来のひび割れ幅や表面観察と透水係数の関係を用いるほか、前年度までに導入した凍結融解試験機を用いての劣化環境下における自己治癒性状の確認や、透気試験によるより緻密なレベルでのひび割れ治癒性状を主眼にして検討を行う。更には、実施工を意識した大型サイズのテストピースを作製し、施工性や納まりも含めた検討を行うとともに、暴露試験や劣化環境下での耐久性試験を実施し、実用化への一定の目途をつける。これらの研究成果は、国内学会2回、国際学会2回を予定している。
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Research Products
(3 results)