2012 Fiscal Year Annual Research Report
圧子圧入によるGPa級高圧インピーダンス測定法の確立と新規ガラス電解質の開発
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23686095
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
大幸 裕介 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70514404)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | インデンテーション / 燃料電池 / プロトン伝導 / ガラス |
Research Abstract |
我々は水素ガス雰囲気において、溶融法で作製したガラス内にプロトンが導入されることを新たに見いだし、またこのガラスを用いて燃料電池発電に成功した。固体電解質のイオン伝導機構の検討には,活性化エネルギーと活性化体積(ΔV)の両方を評価することが有効である。しかし固体の場合は超高圧装置が必要であり,ΔVに関する報告例は極めて少ない。また従来の装置では水素ガス雰囲気での測定など、雰囲気可変が難しいなどの問題もある。 球形圧子などを材料に圧入する圧子圧入試験では,圧子直下にGPa級の高圧場が発生し,様々な材料の力学特性評価に用いられている。そこで本研究では,圧子圧入時の応力場を利用した新しい高圧インピーダンス測定法を確立し、固体電解質のイオン伝導メカニズムの詳細を明らかにすることを目的としている。 本年度は、初年度に完成した装置を利用して、すでに超高圧装置によってΔVが決定されている標準試料(YSZ)のΔV評価にまず着手した。弾性変形領域の範囲において、圧子先端近傍に数GPaの応力が発生すること、また高い再現性で迅速・簡便にΔVが算出可能であることを明らかにした。また本手法と高圧装置を利用した静水圧条件で得られるΔVとの差異を定性的ではあるが計算値より明らかにした。電極配置を工夫することで、より静水圧条件に近いΔVが得られるようになり、理論的な検証も進めている。 本年度はまたガラス試料に対しても高圧インピーダンス測定を行い、強化ガラスのように残留応力がある場合ではインピーダンスが未強化のものと比較して大きく異なることも新たに確認した。残留応力を積極的に利用した新しいイオン伝導体や誘電体の検討につながる成果である。試料ステージに試料を設置するだけで、迅速・簡便に水素・酸素・窒素など様々な雰囲気で高圧インピーダンス測定が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案書の経時予定とほぼ相違なく卓上での高圧インピーダンス測定装置を作製し、実際に標準試料を用いて、室温から600℃の温度範囲で活性化体積が再現性よく算出可能であることを確認した。また本手法で用いているインデンテーション法(局所応力場)と静水圧条件(3軸等方加圧)で得られる活性化体積の違いを両者の圧力分布の違いに帰着し、さらに電極配置の工夫によって両者の差異が減少することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な組成のガラスについて,伝導に伴う活性化体積(ΔV)と活性化エネルギー(ΔE)を求め,ガラス構造とプロトン導入量,およびプロトン導電率との関係を明らかにする。これまでにプロトン導電率はアルカリ金属イオンの影響を受けないことが分かっているが,プロトンがアルカリイオンとは異なる配位状態(伝導経路)でホッピングしているのであれば,アルカリイオンと比較してプロトンのΔVは小さくなると予測される。 また,負のΔVを有するガラスは,応力によって電気特性が向上し,新たなアモルファス半導体として期待される。光学材料では,残留応力は複屈折分布などの原因として問題視されるが,本研究が進展した場合は,カルコゲナイトや金属ガラスを対象に,室温付近でΔVの評価を行う。
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