2011 Fiscal Year Annual Research Report
異常に小さい変態エントロピー変化を有するFe-Mn基合金のBCC相からの相転移
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23686097
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大森 俊洋 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60451530)
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Keywords | 鉄合金 / マルテンサイト変態 / 超弾性 / エントロピー |
Research Abstract |
(1)Fe-X-Y 3元系におけるα⇒γ変態の熱力学解析 Fe基合金におけるα,γ相の安定性は合金元素のγ⇒α変態に伴う部分モル自由エネルギー変化が重要であり、特に磁性の影響が大きい。そこで、Fe-Mn-X(X:フェライト安定化元素)の組み合わせにおいて、磁性の影響を考慮した場合、および、考慮しない場合の両相の自由エネルギーをCALPHAD法にて計算した。その結果、Fe-Mn-Al系において、α相の磁性項が強くα相を安定化していることがわかった。特定のMn、Al組成においてはα相の磁気の影響が弱くなることによりα相の安定化効果が弱められ、高温α相から焼き入れた場合、低温においてT0線を越えてγ相が安定となる領域があることが判明した。このことにより、α⇒γマルテンサイト変態が起こりうることが示唆された。 (2)マルテンサイト変態の探索と状態図の実験的決定 計算でマルテンサイト変態が予測されたFe-Mn-Al系において、マルテンサイト変態を生じる組成域と強磁性領域を明らかにした。 (3)新規マルテンサイト変態の検討 (2)で決定したマルテンサイト変態する合金について、α/γマルテンサイト変態について調査を行った。Fe-Mn-Al3元系では非熱弾性型変態を示すのに対し、Fe-Mn-Al-Ni4元系では熱弾性型変態を生じることが明らかになった。さらに、応力とマルテンサイト変態の関係を詳細に調査した結果、超弾性効果を得ることに成功した。マルテンサイト誘起応力の温度依存性が極めて小さいことを発見し、これが変態エントロピー変化が小さいことに起因することを熱力学的に説明した。このことにより、広い温度範囲で利用することのできる超弾性合金になり得ることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
熱力学解析に基づき鉄合金における新しい種類のマルテンサイト変態を見出したのみならず、超弾性効果を得ることもできた。従来の合金に比較し、温度依存性が1ケタ小さく、作動温度範囲も極めて広いことが判明し、当初の計画以上の性質が見出されているため。また、Science誌に掲載され、国際的に高い評価を得ることもできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
熱弾性型マルテンサイト変態や特徴的な超弾性が得られたため、変態や超弾性特性の詳細について電子顕微鏡や機械試験機を用いて実験的に明らかにしていく予定である。
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