2012 Fiscal Year Annual Research Report
粒内核生成による鉄鋼材料のせん断型変態組織の微細化
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23686098
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮本 吾郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60451621)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | せん断型変態 / マルテンサイト / 結晶粒微細化 / 粒内核生成 |
Research Abstract |
ラスマルテンサイトが生成するFe-18Ni合金およびレンズマルテンサイトが生成するFe-32Ni合金において、加工硬化状態のオーステナイトから生成するバリアントを調査した結果、ラスマルテンサイトではオーステナイト中に導入されるマイクロバンドに平行な晶癖面を有するバリアントの一部が優先生成するのに対して、レンズマルテンサイトでは圧縮面に平行な晶癖面を持つバリアントが優先生成し、バリアント選択則はマルテンサイト形態によって異なることが明らかとなった.このことは、ラスマルテンサイトは母相中の変形組織にそって核生成・成長するのに対して、レンズマルテンサイトの成長は変形組織によって妨げられないためと考えられる.また、Fe-9Ni-C合金の等温保持におけるベイニティックフェライトの成長速度をレーザー顕微鏡によって直接測定し,同一視野のEBSD測定により観察方向と成長速度の関係を調べた.その結果,成長方向が観察面に近いほど見かけの成長速度が大きいのに対して、成長方向が観察面からずれるほど見かけの成長速度は低下することが明らかとなった.このことは、従来その場観察から測定される成長速度のばらつきは、ベイニティックフェライトの真の成長方向と見かけの成長方向の角度に依存していたためと考えられる.最後に、母相中の濃度不均一がマルテンサイト変態に及ぼす影響を明らかにするため、均質化前後のFe-18Ni合金をオーステナイト化後水冷して生成したマルテンサイトで生成するバリアントの定量化を行った.その結果、均質化後組織では予期されたように全てのバリアントがほぼ同じ量生成するのに対して、均質化処理を施さない試料では一部のバリアントの生成量が多いことから、母相中の濃度不均一はマルテンサイトの核生成・成長に影響することが示唆される結果となった.この点については更なる調査が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していた加工硬化母相からのラス/レンズマルテンサイト変態、レーザー顕微鏡+同一視野EBSD測定+母相方位再構築法によるカップリング手法の確立及び本手法によるベイナイト変態のその場観察、溶質元素不均一がマルテンサイト変態に及ぼす影響についてはいずれも当初の予定通りそれぞれの影響を明らかにすることができた。次年度は、最後の課題である母相中の析出物がせん断型変態の粒内核生成に及ぼす影響について調査する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、オーステナイト母相中の微細析出物がその後の冷却中のせん断型変態に及ぼす影響を明らかにするため、Nbを添加/無添加低炭素鋼を用いて実験を行う.両合金をオーステナイト化した後、保持して炭化物を析出させ、その後急冷もしくは低温変態させてマルテンサイトおよびベイナイト変態させた試料の組織を観察して、結晶粒径に及ぼす母相中炭化物の影響を調べる. 以上の実験を通して、変形組織、組成不均一及び母相炭化物がせん断型変態の粒内核生成に及ぼす影響を明確化する.
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Research Products
(7 results)