2011 Fiscal Year Annual Research Report
共有結合性半導体バルク単結晶における一次再結晶過程の解明
Project/Area Number |
23686106
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森下 浩平 京都大学, エネルギー科学研究科, 特定助教 (00511875)
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Keywords | 一次再結晶 / シリコン / ゲルマニウム / 高温塑性変形 |
Research Abstract |
本研究では、高密度に転位を導入した共有結合性半導体バルク単結晶における一次再結晶過程を解明することを目的として、(1)室温で容易にへき開破壊に至るシリコン(Si)を、元の厚さの半分以下にまで押潰すことのできる高温プレス成形加工における変形機構の解明にむけた基礎検討、(2)結晶に高密度に導入された転位の歪場を解消することを駆動力とした一次再結晶過程の解明にむけた基礎検討、を平成23年度の課題として設定、研究を進め、以下の成果を得た。 成型用の型として上下とも平面の型を用い、φ3mm、t2mmのSi単結晶を融点の極近傍の温度(1405℃:融点=1414℃)で成形した結果、変形量における結晶の上面方位依存性が認められた。また、変形後の試料に対してSEM-EBSP法による結晶方位解析を行った結果、平面成型であっても、平凸レンズ形状に成型した場合と同様の方位分布・転位分布を有することが明らかとなった。内部組織の変化は、力の印加方向と結晶方位の関係に依存すると考えられるが、今後精査していく中で、変形バルク内の転位密度分布を制御する為の情報を蓄積していく。 一方で、高密度に転位を導入したSiの再結晶過程を熱走査過程で検知するために、高温用示差走査熱量計(DSC)および高温環境下電気抵抗率測定器の導入を進めた。前者については、ガスフローの工夫により酸素濃度を大幅に低減する装置へと設計改良し、シリコンの酸化による影響を除外することに成功した。また、上記成型後の試料についてDSC評価を行った結果、通常、Tm/2(Tm:融点)以上とされる再結晶開始温度よりも大きく高温側にずれていることが明らかとなった。 次年度より、これら装置の本格運用および大荷重の変形が可能となる装置の導入により、変形温度・荷重および速度、結晶方位、熱処理温度および時間と再結晶過程・組織との相関を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
熱走査過程における再結晶の発現を検知するためには、内部構造変化に伴う示差熱変化の測定が可能な、高温用示差走査熱量計(DSC)は必須であり、本研究課題の主要設備となっている。対象とする材料は酸化雰囲気での表面酸化が著しく、熱処理雰囲気における酸素濃度の大幅な低減が必要であったが、通常のDSCはそのような仕様にはなっていない。そこで、装置のガスフローラインの設計変更・改良することにより目的に適う装置とした。この設計変更および装置作製に時間を要したため、現時点では再結晶過程に関する研究に遅れを生じている。しかしながら、本設計変更により、良好な結果が得られており、研究全体としてはプラスであったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題申請時に結果を得ていた球面平凸レンズ形状と、本報告年度で得た平面成型とで、結晶内部構造における面方位の変化が同様であったことから、成型幾何形状よりも結晶方位と力の印加方向との関係が、変形後組織に対しより支配的であることが示唆されている。したがって、最終的に再結晶組織の制御を目指すには、より詳細に各種パラメータ依存性について検討する必要がある。 次年度より、再結晶過程のその場観察も進めていく予定であるが、予備検討を行った結果、試料表面酸化膜の形成がここでも問題となっている。DSCでの酸素濃度低減システムをその場観察炉においても適用することで解決を図っていく。
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