2012 Fiscal Year Annual Research Report
共有結合性半導体バルク単結晶における一次再結晶過程の解明
Project/Area Number |
23686106
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森下 浩平 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (00511875)
|
Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
|
Keywords | 一次再結晶 / シリコン / ゲルマニウム / 高温塑性変形 |
Research Abstract |
本研究では、高密度に転位を導入した共有結合性半導体バルク単結晶における一次再結晶過程を解明することを目的として、(1)室温で容易にへき開破壊に至るシリコン(Si)を、元の厚さの半分以下にまで押潰すことのできる高温プレス成形加工における変形機構の解明にむけた検討、(2)結晶に高密度に導入された転位の歪場を解消することを駆動力とした一次再結晶過程の解明にむけた検討、を平成24年度の課題として設定、研究を進め、以下の成果を得た。 成型用の型として上下とも平面の型を用い、φ3 mm、t2 mmのSi単結晶を融点の極近傍の温度(1405 ℃:融点=1414 ℃)および1355、1305、1255℃で種々の荷重で成型し、高温プレス成型の条件依存性を精査した。また、本年度後半に導入した抵抗加熱式熱間成型装置を用いて、10kNまでの荷重印加が可能となった(従来は1kN)。高荷重での変形量および再結晶挙動は次年度においても引き続き精査する。また、本装置はヒーター抵抗加熱による使用を基本としているが、試料およびその周囲に対してのパルス通電加熱も可能な装置となっている。このパルス通電下での変形において、シリコンが通常加熱方式では破壊されてしまう900℃という低温でも変形可能であることが明らかとなり、今後この現象についても精査する予定である。 一方で、高密度に転位を導入したSiの再結晶過程を熱走査過程で検知するために、高温用示差走査熱量計(DSC)を用いた検討を進めた。20℃/min、10℃/minでの熱走査過程では再結晶挙動が検出されなかったが、設定温度で保持し続けた場合に再結晶に起因するDSC挙動が検出された。したがって変形量・処理温度に対して潜伏期による整理が可能となった。 本年度得られた結果を基に組織解析を進め、次年度でのシミュレーションおよび再結晶過程のその場観察結果の考察へとつなげる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
熱走査過程における再結晶の発現を検知するため、内部構造変化に伴う示差熱変化を高温用示差走査熱量計(DSC)を用いて試みたが、再結晶発現に長時間を要することが明らかとなり、純粋に実験時間を要するようになっている。 今年度半ばに導入予定であった抵抗加熱式熱間成型装置の納入が年度後半にずれ込んだため、高荷重条件での実験が遅れている。この遅れは次年度前半に取り戻せる予定である。本装置では、当初予定になかった新規現象も確認されており、今後の展開が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
【高温プレス変形の各種パラメータ依存性】 本年度後半に導入された大荷重成型装置を用い、次年度に引き続いて高応力領域での変形応答性および転位導入過程を精査することで、高温プレス変形のパラメータ依存性に対する情報を取得する。 【計算機シミュレーションによる高温プレス変形過程の解明】 異方性を考慮した三次元有限要素解析により、応力分布と実験データ・転位分布観察結果を対応させ、変形過程を定量的に解明することを目指し、変形シミュレーションに取り組む。これらの知見により、結晶にマクロ的にかかる応力と、結晶内での塑性緩和(転位の導入)との対応の比較検討を行う。これらのデータ収集・解析を進め、共有結合性半導体結晶の高温プレス変形機構を解明する。 【再結晶化過程のその場観察実験】 高温プレス成型した試料片を観察窓を有した小型炉内で熱処理することにより、試料片表面観察から再結晶化の動的過程をその場観察する。本年度までの実験において、僅かに存在する酸素を原因とした表面酸化が再結晶に先立ち起こるため、通常雰囲気下では酸化膜層の下で起こる再結晶化過程のその場観察が行えないことが明らかとなっている。次年度は実験雰囲気を還元雰囲気に変更して解決を図る。これにより動的過程を明らかにするとともに、これまでの静的結果と比較する。
|