2011 Fiscal Year Annual Research Report
新世代治療抗体分野を切り拓く汎用的抗体多特異性化プロセスの開発
Project/Area Number |
23686118
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅野 竜太郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323103)
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Keywords | 癌 / 蛋白質 / バイオテクノロジー / 二特異性抗体 / ファージ提示法 |
Research Abstract |
EGFR/ErbB3二特異性抗体の創製を目指して、新規変異導入ライブラリの設計とFv添加型のオープンサンドウィッチ法の開発を進めた。 まず抗EGFR抗体のVHに変異を導入したライブラリを提示したファージを調製後、ErbB3強制発現CHO細胞を用いた生細胞パニングを行った。配列解析の結果、濃縮クローンは得られなかったもののアミノ酸の出現頻度には偏りがみられたため、可溶性のFvを調製しフローサイトメトリーにより結合活性を評価したが、EGFRへの結合活性は担保していたもののErbB3への結合活性はみられなかった。変異導入箇所の拡大は、EGFRへの結合活性の喪失が懸念されるため、Fv添加型のオープンサンドウィッチ法の開発によるVLへの変異導入を試みた。本手法は、ファージに提示させたVLとFvを構成しているVLがドメインスワッピングにより入れ換わることを前提としているため、まずこのことを実証するために、検出用のペプチドタグを付加したVLと検出用のペプチドタグを含まないFvをそれぞれ個別に大腸菌発現系を用いて調製し、両者を混合後EGFRに対する結合活性の有無により交換反応を評価した。結果、混合比等を検討することで、効率的にドメインスワッピングを起こす条件を得ることに成功した。続いて、変異導入箇所を決定するために結晶構造を基に、溶媒表面に露出している残基を選抜した結果、14箇所が候補として挙げられた。しかしながら調製可能なライブラリ規模をはるかに越えてしまうため、バイナリーコードと名付けられたチロシンとセリンの2種のアミノ酸とVL中にもEGFRへの結合ホットスポットが存在する可能性を考慮して、バイナリーコードに野生型のアミノ酸を加えた3アミノ酸に絞ったライブラリの作製を試み、結果理論規模を担保させたライブラリの構築に成功した。今後、本ライブラリを用いた選択操作へと進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EGFR/ErbB3二特異性抗体の創製を目指して、抗EGFR抗体のVHに変異を導入したライブラリを提示したファージを用いて選択を行った。結果、有望なクローンは得られなかったが、ある程度想定していたためVLへの変異導入に切り換えて研究を進めた。変異導入したVLの選択は、VH自体が単独で可用性の分子として調製できないために、新たな選択手法の開発が必要であったが、Fvとして添加して、ファージに提示させたVLとのドメインスワッピングを生じさせる手法を考案し、実際にその交換反応を実証することに成功した。 一方、バイナリーコードと名付けられたチロシンとセリンを含む4種のアミノ酸だけで十分にタンパク質間相互作用を創出可能であることが報告されていたため、野生型のアミノ酸を加えた5アミノ酸に絞ったライブラリを作製することで理論規模を担保させる予定であったが、この5アミノ酸だけを生み出すミックスコドンが必ずしも創出できなかったことと、導入予定残基が14箇所と多かったため、バイナリ―コードの2アミノ酸と野生型の3種類のアミノ酸に限定して、研究を進めることとした。以上の様に、当初の予定から進捗に応じて少し修正しているものの、研究全体としては大きな遅れは生じていないためおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発した新規変異導入ライブラリを実際に調製し、Fv添加型のオープンサンドウィッチ法を用いた選択を進め、諸条件の検討を行うなど新規手法の確立を目指す予定である。その後、実際にこれまでに作製したVL変異導入ライブラリ、および新たに作製するVLライブラリをそれぞれ用いて、ErbB3強制発現CHO細胞と正常なCHO細胞を用いた生細胞パニングによる選択操作を進め、EGFR/ErbB3二特異性抗体を取得する。 一方、二特異性化抗体調製プロセスの汎用性を検証するための基盤技術の整備として、抗CD16抗体の機能評価技術の確立や、ヒト型化抗CD16抗体を用いたガン治療を目指した組換え抗体を作製、機能評価を行うと共に、EGFR/HER2二特異性抗体の取得など、他の二特異性抗体の開発も進めたいと考えている。
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Research Products
(12 results)