2011 Fiscal Year Annual Research Report
バイオテクノロジーを駆使した人工筋組織による新原理アクチュエータの創製
Project/Area Number |
23686121
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井藤 彰 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (60345915)
|
Keywords | バイオアクチュエータ / 筋芽細胞 / 筋組織 / ティッシュエンジニアリング / 遺伝子導入 / 磁性ナノ粒子 / リポソーム / マグネタイト |
Research Abstract |
現行の機械的なアクチュエータと比較すると、生体内の筋肉はきわめて高いエネルギー効率を有している。本研究では、研究代表者が今までに開発してきた「磁力を用いた三次元組織構築技術」を応用して、高密度の筋芽細胞からなる三次元組織を構築し、さらに遺伝子導入により機能を高めて、電気刺激に応じて収縮運動する人工筋組織(バイオアクチュエータ)を構築することを目的として研究を行った。 平成23年度は研究実施計画に基づいて主に以下の2つの研究課題に関して研究を行った。 1.磁力を用いた三次元筋組織の構築 正電荷脂質に磁性ナノ粒子を包埋することで、マグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)を作製し、MCLを添加することで磁気標職した筋芽細胞を磁力で中空糸型バイオリアクター内に集積させることで、中空糸を含む三次元細抱組織を構築した。さらに中空糸内に筋分化誘導培地を還流して培養することで、多核化筋細胞からなる三次元筋組織を作製した。中空糸を毛細血管網と見立てることで、厚みのある三次元組織の構築が可能となったことから、本方法は筋組織作製において有用であると考えられる。 2.Bcl2遺伝子導入筋組織の機能評価 筋組織をアクチュエータとして使用する場合には、遺伝子導入によって筋芽細胞の能力を高めることが可能になると考えられる。Bcl2はミトコンドリアにおける抗アポトーシス作用を発揮するタンパク質として知られている。Bcl2遺伝子を導入したC2C12筋芽細胞(C2C12/Bcl)は、Bcl2の抗アポトーシス作用によって、組織構築後の細胞の高密度化に伴う低酸素状態でも細胞の生存率が向上し、筋組織の発生する力が約2倍に増強された。これらの結果から、Bcl2遺伝子導入はバイオアクチュエータ構築に有用であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した通りの実験計画のタイムスケジュールで、それぞれの担当学生の努力により研究が進んでいる。初年度の成果として論文を発表できたことと、さらにもう1報投稿することができた(投稿中)ことは当初の計画以上だが、作製した人工組織の筋疲労の解析など、チャレンジングな解析ではやや遅れているため、全体的に見ると概ね順調であるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度も申請書の計画の通り、研究を進めていく。今年度に修士課程の学生1名が卒業するので、人員を1名、卒業研究生から新たに補充して、引き続き研究を推進していく。また、現在解析中の遺伝子(IGF-I,Bcl-2,PGC-1 alpha)において、期待されたほどの筋組織機能増強効果が得られない場合には、研究計画書に記載したように、随時新しい候補遺伝子を選択して、研究を進めていく。
|