2012 Fiscal Year Annual Research Report
バイオテクノロジーを駆使した人工筋組織による新原理アクチュエータの創製
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23686121
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井藤 彰 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60345915)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バイオアクチュエータ / 筋芽細胞 / 筋組織 / ティッシュエンジニアリング / 遺伝子導入 / 磁性ナノ粒子 / リポソーム / マグネタイト |
Research Abstract |
現行の機械的なアクチュエータと比較すると、生体内の筋肉はきわめて高いエネルギー効率を有している。本研究では、研究代表者が今までに開発してきた「磁力を用いた三次元組織構築技術」を応用して、高密度の筋芽細胞からなる三次元組織を構築し、さらに遺伝子導入および電気刺激培養により機能を高めて、電気刺激に応じて収縮運動する人工筋組織(バイオアクチュエータ)を構築することを目的として研究を行った。平成24年度は研究実施計画に基づいて主に以下の2つの研究課題に関して研究を行った。1. 人工筋組織の電気刺激培養前年度までに、磁力を用いた三次元組織構築技術で、電気刺激によって収縮する筋組織を作製することに成功している。電気刺激のプログラムを筋肉トレーニング用に変更して電気刺激培養を行った。印可電圧・周波数・パルス幅を変えて条件検討を行ったところ、0.3V/mm, 1Hz, 4msの電気刺激条件で培養した場合に最も効果が高く、電気刺激培養なしの場合と比較して約5倍強い力を発生する人工筋組織を作製することに成功した。2. 培養筋芽細胞のタイムラプス解析基底膜などの細胞外マトリクスの影響を調べるために、コラーゲンタイプI, コラーゲンタイプIV, ラミニン, フィブロネクチンがコートされた培養皿を用いて、前年度で人工筋組織の収縮力増強に効果がみられたIGF-1遺伝子を導入したマウス筋芽細胞株C2C12の細胞遊走速度、増殖速度および分化度への影響を調べたところ、コラーゲンタイプIV上で培養した際に、最も効果が高い結果が得られた。これらの結果から、人工筋組織の作製にはコラーゲンタイプIVの添加が有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した通りの実験計画のタイムスケジュールで、それぞれの研究計画を担当する学生たちの努力により研究が進んでいる。二年目の年度の成果として論文を2報(Yamamoto Y et al. Journal of Chemical Engineering of Japanおよび Sato M et al. Tissue Engineering Part A)発表できたことと、さらにもう1報を投稿準備中であり、学会発表も精力的に行った。作製した人工組織の機能強化については、成果が着々と出ている。特に電気刺激培養に関しては、印可電圧・周波数・パルス幅といった3つの電気刺激条件をそれぞれ変えるといった、今までに例のない詳細な方法で培養を行い、人工筋組織に最適なトレーニングプログラムを見いだすなど、重要な知見が得られた。また、電気刺激だけでなく、マイルドな加温(39℃)を人工筋組織に与えながら培養することで、人工筋組織の収縮力増強に効果があることも見いだした。さらに、人工筋組織の収縮力強化のために導入する遺伝子として、フォリスタチンを新たな筋肥大関連遺伝子として検討に加えるなど、当初の計画以上に進んだ部分もあると考えられる。一方で、「人工筋組織の自己再生能解析」といったチャレンジングな分野での解析では、平面培養での筋芽細胞の遊走・増殖・分化を解析するにとどまり、未だ三次元の人工筋組織での解析に至っていない点は、やや遅れていると判断される。こういった見地から、全体的に見ると概ね順調であると言えるのではないかと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も申請書の計画の通り、研究を進めていく。修士課程の学生1名が修了するので、人員を2名、卒業研究生と修士課程の学生から新たに補充して、引き続き研究を推進していく。次は最終年度として、これまでの研究のまとめを行う。具体的には、人工筋組織の機能強化として、引き続き、新たに導入遺伝子の候補として検討しているフォリスタチン遺伝子導入の効果を調べ、前年度までに効果が確認されたIGF-1遺伝子の導入およびBcl2遺伝子の導入との組み合わせを行っていく。さらに、前年度の申請者らの検討で明らかになった「人工筋組織成熟における電気刺激培養の必要性」に基づき、前述の遺伝子導入人工筋組織を電気刺激培養することで、生体内の筋肉の収縮力を目標値として、筋機能を総合的に高めることで強い力を発生する人工筋組織を構築する。また、人工筋組織の自己再生能解析については、申請書の計画の通り、磁力を用いて作製した人工筋組織のマトリクス成分を検討して、数か月スパンの長期大量培養法を確立する。前年度に申請者らの検討で明らかになったコラーゲンタイプIVの筋芽細胞における基底膜としての遊走・増殖・分化の増強効果を受けて、コラーゲンタイプIVを基底膜として補強した細胞外マトリクスの人工筋組織における「自己再生」効果を調べ、長期培養における人工筋組織の「耐久性」という新しいスペックを打ち出す。これらの研究成果は、一流の国際ジャーナルへ積極的に投稿したり、国際および国内の学会で発表したり、あるいは、ホームページなどを通して一般の方々へ発信していく予定である。
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Research Products
(10 results)