2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネ光周性花成抑制因子Ghd7依存的な限界日長によるEhd1転写制御機構の解析
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23687007
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
伊藤 博紀 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物生産生理機能研究ユニット, 任期付研究員 (00466012)
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Keywords | 光周性 / 限界日長 / フロリゲン / 転写制御 |
Research Abstract |
Ehd1の発現はフィトクロム依存的にGhd7を介して抑制される一方で、青色光依存的に誘導されるが、その具体的なメカニズムは明らかになっていない。そこで、Ehd1のプロモーター解析を行った結果、転写開始点近傍の約80bp内に青色光応答シス配列が存在することを明らかとした。さらに、10bp単位のリンカースキャンを行い、候補領域内には複数のシスが存在し、それぞれがコアとなる共通モチーフを持つことを明らかにした。現在、DNA結合因子の同定を進めているが、見出したシス配列は、シロイヌナズナにおける既報の青色光応答シス配列とは異なることから、Ehd1の青色光応答機構は新奇経路である可能性が強く示唆された。 Ehd1遺伝子発現に限界日長応答を与えるGhd7の抑制機構を明らかにするために、13時間と13.5時間の日長刺激を与えた野生型イネにおけるEhd1の青色光依存的な転写誘導を時系列的に解析したところ、Ehd1の抑制は日の長さに応じて強まるという結果を得た。このことは、Ghd7の抑制が日長に応じて緩やかに増加する可能性を示唆している。この抑制が、Ghd7のタンパク質量に依存するのか、それとも、タンパク質量変化を介さない活性自身の制御によるのかを明らかにするために、内生の発現パターンを相補するGhd7ゲノム断片の探索と朝にGFP融合型Ghd7を発現する形質転換体の作製を行った。後者については、形質転換体当代で、出穂期が遅延する複数の独立した系統を得た。現在、各系統のホモ化を進めている。 また、計画外の成果として、イネのELF3ホモログの遺伝学的解析を行った結果、シロイヌナズナでは概日時計の制御に機能するELF3のイネホモログは、概日時計の下流でGhd7の転写制御に機能することを明らかにした。このことは、花芽誘導において、イネではELF3の機能分化が起こっていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロモーター解析では、刺激応答性がプロモーターの長さにより影響される場合が多々報告されているため、Ehd1に明瞭な青色光応答性を与えるシス配列が同定できたことは大きな進展である。また、コア配列が新規である点も重要である。一方で、Ghd7の解析に関しては、具体的な成果は今後であり、現状は、系統の作出及び実験系の確立が中心である。以上を踏まえて総合的に判断すると、達成度は概ね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、今後は、Ghd7のタンパク質レベルの解析および青色光依存的な転写活性化に係るDNA結合タンパク質の同定から、具体的なメカニズム解明に向け生化学的解析を行うための材料作りも進める。形質転換体のホモ系統の確立において、イネは、その生活環の長さ故、実験材料として不利であるが、閉鎖系のグロースチャンバーを効率的に使用し、実験に必要な種子を確保しつつ、世代促進に努める。
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Research Products
(1 results)