2012 Fiscal Year Annual Research Report
イネ光周性花成抑制因子Ghd7依存的な限界日長によるEhd1転写制御機構の解析
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23687007
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
伊藤 博紀 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (00466012)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光周性 / イネ / 限界日長 / フロリゲン / 転写制御 |
Research Abstract |
今年度は、青色光依存的なEhd1の転写促進機構に関する解析をさらに進めた。植物では、青色光受容体としてCRY型およびLOV-F-box型受容体が転写制御に機能すると考えられている。これまで、OsCRY1aやOsCRY2過剰発現体、F-box変異型OsFKF1過剰発現体、OsZTL T-DNA系統を解析し、OsCRY1a過剰発現体でのみ、Ehd1の発現が野生型と比較して特徴的な変化を生じることを見出した。また、Ehd1の機能を欠損する品種T65の遺伝背景であるものの、CRY依存的な光信号伝達の下流で機能する負の制御因子COP1の機能欠損変異体では、Ehd1の発現が上昇するという予備的な結果も得た。つまり、Ehd1の転写制御はCRY1-COP1の経路を介する可能性を示唆している。次に、既に同定したEhd1プロモーター上の青色光応答シス配列がin vivoでの花成促進に必須であることを明らかにするために、変異型のシス配列を導入したプロモーターにEhd1を融合した遺伝子と野生型プロモーターにEhd1を融合した遺伝子をそれぞれ作製し、T65に導入したところ、変異型プロモータードライブのEhd1現形質転換体は、開花が遅延することを確認した。 Ehd1を日長依存的に抑制するGhd7の機能解析においては、Ghd7タンパク質とc-mycまたはGFPの融合遺伝子を発現させる形質転換体を作出し表現型を確認したところ、c-myc-Ghd7-GFPでは、出穂期を1ヶ月程度まで遅らせる系統が出現する一方で、c-myc-Ghd7では、1ヶ月程度の遅延から200日以上経っても出穂しない系統が出現することを見出した。Ghd7のC-末端にはCCTドメインが存在することから、今回の結果は、C-末端の融合によりGhd7の抑制因子としての機能を阻害する可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
青色光依存的なEhd1の転写促進機構の解明に関しては、具体的な光受容機構のイメージおよびEhd1プロモーター上の作用点であるシス配列を同定している。今後、限界日長認識に重要な光受容機構と概日時計因子OsGIとの関係を明らかにするために、残りの研究期間において、Ehd1プロモーターに結合するDNA結合タンパク質の単離・解析を進めることで、研究の目的の1つである限界日長認識に係る転写促進系の全容解明に向けた研究計画が達成されると期待している。 Ghd7の機能解析に関しては、生理学的な解析を通して、Ghd7の転写レベルでの制御がEhd1の日長依存的な抑制と密接な関係にあることを明らかにしてきたが、タンパク質レベルの生化学的な解析が遅れているため、研究計画全体での達成度は概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、Ehd1の青色光依存的な転写促進経路における青色光受容機構を明らかにするとともに、光シグナル伝達経路で制御される転写因子の同定と機能解析を目指す。転写因子の同定により、限界日長を境にしたEhd1プロモーター上での転写因子のスイッチングを分子レベルで証明できると期待している。 これまで、Ghd7の生化学的な解析を試みるために、内在性のGhd7プロモーターおよび維管束特異的且つ朝方に発現を誘導するプロモーターを用いてGhd7を発現させる形質転換体を多数作出してきた。しかしながら、これらの形質転換体ではGhd7遺伝子は発現し、実際に出穂遅延表現型が得られるにも関わらず、Ghd7タンパク質の蓄積が非常に観察され難い。Ghd7タンパク質の解析にあたっては、エピトープやレポーター遺伝子の検討、Ghd7タンパク質とエピトープの融合部位の検討、プロトプラストを用いた一過的な発現系による融合遺伝子の発現効率の確認を通して、使用するコンストラクトの妥当性を確認する。また、発現用プロモーターとして、人為的な発現制御が可能な熱誘導性や恒常的発現プロモーターも利用して、Ghd7タンパク質の安定性制御機構解明に向けた取り組みを進める。
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Research Products
(1 results)