2011 Fiscal Year Annual Research Report
シクリッドとメダカを用いた生殖隔離の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
23687011
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
深町 昌司 日本女子大学, 理学部, 准教授 (20323446)
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Keywords | シクリッド / メダカ / 同所的種分化 / 交尾前生殖隔離 / 遺伝子操作 / 色素細胞 |
Research Abstract |
本研究の目的は、Midas cichlid(Amphllophus citrinellus)の体色二型(ノーマルとゴールド)に関わる責任遺伝子(ゴールド遺伝子)を同定し、この遺伝子の機能をメダカで確認・解析することである。本年度は、先行研究(Fukamachi&Meyer,unpublished)により既に得られていた約480kbのゴールド遺伝子座候補領域を、F_2マッピングパネルを用いて更に約230kbにまで絞り込むことに成功した。この領域に含まれる遺伝子は7個以下であり、このうち最も有力なゴールド候補遺伝子はdopamine receptor D2(DRD2)であると考えられた。というのは、DRD2の機能欠損により体色が暗化することが、マウスから報告されているからである(Saiardi et al.1998 Mol Endocrinol)。 更に、MidascichlidのDRD2遺伝子の全coding regionの塩基配列をノーマル個体とゴールド個体とで比較したところ、脊椎動物全体で強く保存されているアルギニンをヒスチジンに置換するミスセンス変異が見つかった。興味深いことに、この変異はゴールド個体ではなくノーマル個体が持っていた。この結果は、ゴールド形質がノーマル形質に対して優性であること、およびマウスにおけるDRD2の機能欠損による体色暗化との整合性がとれる。すなわち、R→Hのアミノ酸置換によってDRD2の機能が損なわれ、この劣性対立遺伝子をホモに持つ結果、体色がゴールドからノーマルへと暗化するというストーリーである。 以上の結果をふまえ、メダカのDRD2を操作(過剰発現とノックアウト)することで、体色に影響が現れるかどうかを検証する実験を開始したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
極めて有望な候補遺伝子が得られ、かつ突然変異と思しき塩基置換も同定できた。シクリッドで必要な実験は終了しており、既にメダカを用いた遺伝子操作実験に移行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
メダカDRD2cDNA配列をベータアクチンプロモーター下に連結し、その下流にはinternal ribosomal entry site(IRES)とレポーター(GFP)のORFを配置したコンストラクト(参照:Fukamachi et al.2009 Gene)を、マイクロインジェクション法により受精卵に導入してトランスジェニック系統を作出する。一方、TILLING法によりメダカDRD2に変異が入った凍結精子を同定、人工授精によりヘテロ個体を作成した後、アウトクロスを繰り返すことでDRD2のKO系統を作出する。これらの遺伝子改変メダカの体色を、色素細胞数を数えることで定量する。
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