2012 Fiscal Year Annual Research Report
骨形成や糖尿病と関連するNPP1タンパク質の機能構造解析
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23687014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西増 弘志 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00467044)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
骨はカルシウムイオンと無機リン酸が結合したハイドロキシアパタイトからできており、骨の形成はカルシウムイオン、無機リン酸、および、ピロリン酸の濃度のバランスによってコントロールされている。Enpp1タンパク質は細胞外ATPを加水分解しピロリン酸を産生することで過剰な骨形成を抑える役割をもち、Enpp1の遺伝子変異は重篤な骨疾患につながることが報告されている。さらに、Enpp1はインスリンシグナル経路の抑制にも関与しており、Enpp1の遺伝子多型と肥満や2型糖尿病との関連が報告されている。しかし、Enpp1が2つの異なる生理機能を発揮している分子機構は不明だった。 われわれはマウスに由来するEnpp1を高純度に精製し、生化学的な解析を行い、Enpp1はATPを効率よく加水分解しピロリン酸を産生することを明らかにした。さらに、X線結晶構造解析により、Enpp1と4種類のヌクレオチドとの複合体構造を決定し、Enpp1は2つのソマトメジンB様ドメイン、触媒ドメイン、ヌクレアーゼ様ドメインからなること、および、Enpp1のATP認識機構を明らかにした。結晶構造から、これまでに報告されていた骨疾患につながる遺伝子変異は触媒ドメインやヌクレアーゼ様ドメインのアミノ酸残基の置換を引き起こし、Enpp1の立体構造を不安定化させることが示唆された。一方、肥満や2型糖尿病と関連する遺伝子多型はソマトメジンB様ドメインに存在しており、生化学的解析によりソマトメジンB様ドメインは酵素活性には必要ないことが明らかとなった。これらの結果から、Enpp1の触媒ドメインとヌクレアーゼ様ドメインは骨形成に関与し、ソマトメジンB様ドメインはインスリンシグナルに関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Enpp1と複数のヌクレオチド複合体の結晶構造を決定し、Enpp1のATP認識機構を解明し、論文として発表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにEnpp1、Enpp2の結晶構造を決定し、Enppファミリータンパク質の多様な基質特異性の構造的基盤を解明してきた。今後は引き続きEnpp1の構造解析を行うのに加えて、Enppファミリータンパク質の中でも構造未知のEnpp6の結晶構造解析にも取り組む。Enpp6はLPCを加水分解してホスホコリンを産生することでコリン代謝にかかわると考えられている。Enpp6の結晶構造が決定できれば、Enpp1、および、Enpp2との構造比較が可能となり、Enppファミリータンパク質の多様な基質特異性を規定している構造的基盤の理解につながることが期待される。
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Research Products
(5 results)