2011 Fiscal Year Annual Research Report
人為的サリチル酸誘導系を用いたサリチル酸生合成・輸送機構の解明
Project/Area Number |
23688005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
加藤 新平 信州大学, ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点, 助教 (10533614)
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Keywords | 病害抵抗性 / サリチル酸 / MAPキナーゼ / 薬剤誘導 / 生合成機構 / 情報伝達機構 / 輸送機構 |
Research Abstract |
本研究では、サリチル酸(SA)の生合成・輸送機構を解明するため、以下の3課題を実施した。 1.SA生合成経路の新規構成因子の同定 本課題では、傷害に応答しsAを蓄積するw/SIPK RNAi (WS)植物を用いて、SAの生合成機構の解明を目指す。本年度は、WS植物における傷害誘導性SA蓄積の特性を解析すると共に、WS植物において蓄積量が変動するタンパク質を二次元電気泳動で探索した。その結果、WS植物にのみ認められるスポットおよびWS植物において消失しているスポットがいくつか同定された。現在、これらのスポットに含まれるタンパク質を同定中である。また、WS植物で発現量が変動するmRNAをマイクロアレイ解析により探索中である。 2.SA生合成へのBA2HおよびICSの関与 本課題では、SA生合成に関与すると推定されているBA2HとICSが実際にタバコのSA生合成に関与するか明らかにする。本年度は、過去の報告を基にBA2H活性の性質を検討したが、報告結果を再現することができなかった。再現できない原因は不明であり今後の課題である。一方、ICSに関してはタバコのICS遺伝子・NtICSをクローニングし、本遺伝子産物がICS活性を持つことを確認した。 3.SAの色素体外輸送機構の解明 本課題では、薬剤処理に応答し細菌由来のSA生合成酵素を誘導しSAを合成する"薬剤誘導性ICS/IPL植物"を用いて、サリチル酸の輸送・情報伝達機構の解明を目指す。本年度は形質転換体の作製に使用する細菌のSA生合成酵素の選抜を行った。その結果、蛍光菌のIPLと大腸菌のICSの融合タンパク質にルビスコ小サブユニット由来の葉緑体移行シグナルを付加した場合に、SAの蓄積量が最大になることが明らかになった。現在、本融合遺伝子を薬剤誘導性のプロモーター制御下で発現する形質転換タバコを作製中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
"9.研究実績の概要"に記載したように、本研究は3つの小課題からなるが、小課題2のBA2Hの解析を除き予定どおり研究が進展している。BA2Hに関する過去の研究報告を再現できない理由は不明であるが、BA2Hタンパク質が精製されてから15年以上経つにも関わらずその遺伝子がクローニングされない原因はこのような点にあるのかもしれない。BA2Hの解析がうまく行かない場合は、申請書に記載した通り、ICSの解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
小課題1:WS植物においてSAの蓄積と相関を示すタンパク質・mRNAを同定し、それらのSA合成への関与を網羅的に調べる。 小課題2:"11.現在までの達成度"に記載したとおり、BA2Hの解析がうまく行かない場合は、ICSの酵素活性の解析やRNAi形質転換体の作製等を先に進める。 小課題3:作製中の薬剤誘導性SA合成植物の選抜および特性解析を進め、最適なラインの選抜および誘導条件・方法の最適化を行う。条件が確立次第、SAの輸送・情報伝達に関与するタンパク質・mRNAの探索を行う。
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Research Products
(7 results)