2013 Fiscal Year Annual Research Report
人為的サリチル酸誘導系を用いたサリチル酸生合成・輸送機構の解明
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23688005
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
加藤 新平 信州大学, 農学部, 准教授 (10533614)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 病害抵抗性 / サリチル酸 / 生合成機構 / 輸送機構 / MAPキナーゼ |
Research Abstract |
本研究では、サリチル酸 (SA) の生合成・輸送機構を解明するため、以下の3課題を実施した。 <1. SA生合成経路の新規構成因子の同定> 本課題では、傷害に応答しSAを蓄積するWIPK/SIPK抑制 (WS) 植物を用いて、SAの生合成機構の解明を目指す。本年度は、マイクロアレイ解析の結果より以下の条件 (1. SAの蓄積より早く、2. 抵抗性遺伝子よりも遅く、3. WS植物で特異的に誘導される) に該当する遺伝子を、SA生合成関連候補遺伝子として同定した。同定した候補遺伝子の全長cDNAを過剰発現させた所、SAの蓄積を誘導する遺伝子が複数見つかった。 <2. SA生合成へのBA2HおよびICSの関与> 本課題では、SA生合成に関与すると推定されているBA2HとICSに焦点を当てて研究を行う。BA2Hに関しては、昨年度の研究において過去の報告を再現できなかったため、今年度はICSに焦点を当てて研究を行った。シロイヌナズナのICS (AtICS1) とタバコ (NtICS) やイネのICS (OsICS) の生化学的特性が異なる機構を明らかにするため、AtICS1とOsICS間で各種キメラを作製した所、AtICS1のN末端領域およびC末端領域がそれぞれ、AtICS1タンパク質の高蓄積および高活性に関与していることが明らかになった。 <3. SAの色素体外輸送機構の解明> 本課題では、薬剤処理に応答し人工SA生合成酵素を誘導する(=SAを合成する)植物を用いて、SAの輸送・情報伝達機構の解明を目指す。本年度は、昨年度に作製・選抜した2系統の人工SA生合成酵素遺伝子をエストラジオール誘導性プロモーター制御下で発現する形質転換体より採種し、次世代を用いて薬剤処理によるSAの誘導条件について検討したが、次世代においては薬剤処理による顕著なSAの蓄積が認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
“9. 研究実績の概要”に記載したように、本研究は3つの小課題からなる。小課題1は順調に進展しており、“WIPK/SIPK抑制植物における傷害に応答したサリチル酸(SA)蓄積”の特性を解析し、論文として発表した。また、同現象を用いて、SA生合成に関与する遺伝子を既に同定している。 小課題2に関しても、BA2Hに関する過去の研究報告を再現できない点を除けば順調に進展しており、シロイヌナズナのAtICS1がタバコやイネのICSと比較して非常に高いICS活性を示すこと、AtICS1の高いICS活性にはそのC末端領域が関与することを既に明らかにしている。 一方、小課題3においては、人工SA合成酵素遺伝子をエストラジオール制御下で発現する形質転換体を作製したが、薬剤処理に応答しSAを顕著に蓄積する形質転換体の系統を得ることができず、現在エストラジオールとは異なる薬剤であるデキサメタゾン誘導性プロモーター制御下で人工SA合成酵素遺伝子を発現する形質転換体を作製し直していることから、自己点検評価を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
小課題1: 今年度同定した、過剰発現させるとSAの蓄積を誘導する遺伝子に焦点を当て、それらの遺伝子産物がどのような機構でSAの生合成を誘導するのか調べる。また、WIPK/SIPK抑制植物において同定された、他のSA生合成関連候補遺伝子についても、過剰発現させるとSAの蓄積が誘導されるか調べる。 小課題2: AtICS1がNtICSやOsICSよりも高い活性を示す機構を明らかにするため、AtICS1の高活性に関与することが明らかになっているAtICS1のC末端領域を一アミノ酸レベルで解析する。 小課題3: デキサメタゾン誘導性プロモーター制御下で人工SA合成酵素遺伝子を発現する形質転換体を作製すると共に、良い形質転換体の系統が得られない場合を想定し、一過的発現系の条件についても検討する。
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Research Products
(5 results)