2011 Fiscal Year Annual Research Report
防御応答メカニズムを利用して成立したマメ科植物ー根粒菌共生の進化プロセスの検証
Project/Area Number |
23688007
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中川 知己 明治大学, 研究・知財戦略機構, 共同研究員 (90396812)
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Keywords | 共生 / 防御 / 進化 / NFR1 / CERK1 / 根粒菌 / マメ科植物 / 菌根菌 |
Research Abstract |
マメ科植物は根粒菌と共生を行うことで、窒素栄養を獲得することができる。一方で植物は多種多様な病原菌の脅威にさらされており、これに対抗するために高度な防御応答メカニズムを備えている。植物が病原菌を排除しながら、根粒菌を受け入れているメカニズムはほとんど研究が進んでいない。 マメ科植物は根粒菌の分泌するNodファクターを認識することで、根粒菌を受け入れるためのプログラムを開始する。共生の開始に必須である植物のNodファクター受容体NFR1は、防御応答を担うことが知られているCERK1受容体から進化したことを我々は明らかにしている。本研究ではCERK1のどのような変化が防御から共生への変化をもたらしたのかについて調べることを目的とする。 シロイヌナズナのキチン受容体AtCERK1の細胞内ドメインには、共生応答を誘導する能力が無い。しかしNFR1が持つ3アミノ酸のYAQ配列を導入すると、AtCERK1は共生応答誘導能力を獲得する。今年度の研究で同定したトマトやトウゴマなどの非マメ科植物CERK1ホモログはYAQ配列を持つことが明らかとなった。またイネやソルガムなどはYARの配列を持つが、シロイヌナズナと同じアブラナ科のハクサイ、ブロッコリーではYAQ/YAR配列が欠失していた。検証の結果、これらのYAQ/YAR配列を持つ非マメ科CERK1ホモログは全て共生応答誘導能力を持つことを明らかになった。 根粒菌共生はマメ科植物に限定されているが、そのメカニズムの一部は陸上植物の80%が共生する菌根菌共生にも使われている。NFR1はこの菌根菌共生にも必須の経路を活性化する役割を持つが、菌根菌共生においてNFR1に相当する受容体はこれまで知られていない。我々はCERK1が菌根菌共生においてNFR1と同等の役割を果たしていると考え、次年度検証する予定である。また防御から共生への転換は、陸上植物-菌根菌共生時に起こった可能性がある。これを検証するために、陸上植物で最も古いコケ植物におけるCERK1の役割を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予想外の結果であるが、本年度得られた成果は当初の予想よりも重要で興味深いシステムの存在を示唆しており、当初の計画以上に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で、防御応答を担うCERK1が菌根菌共生に関与する可能性が示唆されている。これを検証するために、イネのCERK1破壊株を作出して菌根菌共生への影響を調べる。また防御から共生への転換がどのように行われたのかを調べるために、菌根機共生を行うコケ植物でCERK1や共生遺伝子の機能を調べる予定である。
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