2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規還元的脂肪酸代謝の探索と有用物質生産プロセスの開発
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23688011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸野 重信 京都大学, 農学研究科, 助教 (40432348)
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Keywords | 還元 / 脂肪酸 / 有機酸 / アルコール / 飽和化 / 微生物 |
Research Abstract |
現在幅広く研究が進んでいる微生物研究の脂肪酸代謝は、酸素が存在する好気条件下での代謝であり、酸化的反応(不飽和化反応)が主である。それに対し、還元反応(飽和化反応)に関する知見はほとんどない。また、工業的有機合成で行われる還元反応では、高温・高圧を必要とするだけでなく、位置特異性や幾何選択性がほとんどないことから、有機合成での位置・幾何選択的な還元反応は不可能である。そこで本研究では、微生物を用いた還元的反応に着目し、新規還元的脂肪酸・有機酸代謝の探索を、ガスクロマトグラフを導入して精力的に行った。 1)不飽和脂肪酸の還元的脂肪酸代謝について 平成23年度では、新たにターゲット化合物(分岐鎖不飽和有機酸)を設定し、本化合物を幾何選択的に還元(飽和化)する微生物の探索を行った。 方法は、微生物を培養・集菌・洗浄した洗浄菌体を触媒とし、基質とともに嫌気的にインキュベート(反応)を行った。反応後、反応液を解析することにより生成物の有無を確認した。その結果、ある種の微生物がターゲット化合物を幾何選択的に還元(飽和化)することを見いだした。さらに詳細な反応機構の解明を行った結果、本反応は複数の酵素が関与する反応であることを示唆した。 2)カルボキシル基をアルコールへと還元する活性について 平成23年度では、ある脂肪酸を対象にカルボキシル基をアルコールへと還元する能力を有する微生物の探索を行った。方法は、基質である脂肪酸を添加した培地に微生物を植菌して培養を行い、培養終了後の培養液を解析することにより、カルボキシル基のアルコールへの還元活性を解析した。その結果、タイプの異なる複数の微生物が、本基質のカルボキシル基をアルコールへと還元することを見いだした。さらに、本菌の洗浄菌体を触媒として、基質とともに反応を行ったところ、洗浄菌体においても、カルボキシル基のアルコールへの還元を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記で述べたターゲットとした化合物2種類に対して、期待していた変換能を有する微生物の取得に成功した。 さらにこれらの微生物を用いて、詳細な反応機構や酵素の同定等を手がけており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度において取得した反応について詳細に検討するとともに、物質生産プロセスの開発を目指す。 本研究内容に新規性が多く、また幅広い応用性が期待できる内容を含んでいるため、様々な用途への可能性を探る。
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