2012 Fiscal Year Annual Research Report
植物に共生するメタノール資化性細菌の多様性と共生機構の解明
Project/Area Number |
23688012
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
谷 明生 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (00335621)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 国際研究者交流 / Methylobacterium属細菌 / methanol / stomata / スイス |
Research Abstract |
本研究は、植物に多く共生しその生育を促進するMethylobacterium属細菌について、(1)数多く収集した新種菌について系統分類を行う。(2)植物生育促進作用に関わる分子メカニズムを解明する。(3)本属細菌の植物体内での生態を明らかにする。ことを目的としている。 (1)についてはMALDI-TOF/MSを用いた多様な植物から分離した本属菌体総タンパク質の質量分析スペクトルパターンの詳細な解析により、15-20種の新種候補株が得られており、すでに4種の新種提唱を行った(IJSEM誌に発表)。(2)と(3)について、本属細菌由来のPQQが植物の気孔を開くことを発見している。この効果は、多くの植物でも同様に起こり、処理時間と処理濃度に依存する。植物において細菌の鞭毛タンパク質を認識して気孔を閉じるシグナル伝達経路に関わる遺伝子の欠損株(fls2, bak2, ost1)植物体では気孔が開かないことや、植物病原性細菌の鞭毛(flg22ペプチド)認識により生成する活性酸素とエチレンの合成量が抑制されることを確認している。以上のことからPQQは植物の病原性細菌認識により気孔を閉じる作用を抑制し、逆に開かせる作用があることが分かる。今後は気孔開口が植物の光合成に与える影響、メタノールの気孔からの放出量の検討、ならびに本属細菌が気孔を通じて植物体内にどれほど移行するのかを検討する。 PQQによる気孔開口は植物病原性細菌に対する応答とは全く逆のものであり、本属細菌が植物上で優占可能な理由の一つであると考えられる。また本研究はスイスチューリヒ工科大学のJulia Vorholt教授の研究室に赴いて共同研究を行った成果を一部含む。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本属細菌が持つメタノール脱水素酵素の中にこれまで知られていたCa依存のものだけでなく希土類であるランタン(La)依存性のものがあることが分かり、この件について共同研究で論文を発表した。本酵素は植物表面で高発現する酵素の一つであり、希土類元素が植物との相互作用に重要であることが予想される。本酵素の全く想定していない機能の発見で当初の予定とは異なったことも手がけている。
|
Strategy for Future Research Activity |
概ね順調であり、大きな変更はないが、気孔を開く活性はこれまで報告のない新しい現象である。この現象のメカニズムを明らかにし、その生物学的な意義も明らかにして、インパクトの高い報告としてまとめたいと考えている。J. Vorholt教授とは綿密な情報交換を今後も続け、必要な実験資材の提供等の協力等をとりつけている。
|
Research Products
(8 results)