2011 Fiscal Year Annual Research Report
気孔密度制御に着目した機能性植物作出のための基盤研究
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23688015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
近藤 竜彦 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (30362289)
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Keywords | ペプチドホルモン / 気孔 / stomagen / EPF family |
Research Abstract |
(a) EPFペプチド類の調製 すでにstomagenおよびEPF1について検討していた経験に基づきEPF2(52残基)を化学合成または大腸菌を用いた組換えタンパク質として得る手法について検討し、最終的に組換えタンパク質として効率よく得る系を確立した。また調製したペプチドをシロイヌナズナ植物体に処理した結果、EPF1、EPF2は20uMの濃度で子葉の気孔密度を大きく低下させることを明らかにした。また、EPF1、EPF2をトリプシン及びキモトリプシンで処理し、得られた断片のMALDI-TOFMSおよびMSMSスペクトルを解析した結果、EPF1、EPF2はともにstomagenと同様の分子内ジスルフィド結合を形成していることを明らかにし、EPFファミリー内で立体構造が保存されていることを明らかにした。 (b) EPFファミリーペプチドの網羅的探索 インターネット上でゲノム情報が公開されている約40種の植物に対して、stomagenおよびEPFファミリーペプチドの遺伝子またはアミノ酸配列をクエリーとしてホモロジー検索を行い、各植物種のゲノム上にコードされるEPFホモログ遺伝子の配列情報を得た。EPFファミリー遺伝子はコケ植物以降に派生した高等植物で高く保存されており、そのうちstomagenサブファミリーのホモログは気孔を獲得したシダ植物以降の植物の全てで見いだされた。 (c)stomagen受容体の探索 今年度の研究費で購入したマイクロウェーブペプチド合成機を用いて、光反応性アミノ酸(photo-Leucine)と蛍光官能基(Alexa488)を導入したプローブを合成し、リフォールディングを行った。合成したプローブはシロイヌナズナに対して野生型のstomagenとほぼ同等の強い気孔密度上昇活性を示したことから、受容体探索のための有効なプローブとなることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、stomagen、EPF1、EPF2という3個のEPFファミリーペプチドについて化学合成および組換えタンパク質の調製に取り組み、生理活性を有するペプチドを得る手法を確立した。この手法は、今後他のEPFファミリーペプチドを合成し機能解析を行う際にも利用することができ、EPFファミリーペプチド研究の基盤技術の一つとなると考えている。 シロイヌナズナのゲノム上にコードされた11個のEPFファミリー遺伝子およびその転写産物の配列情報をもとに、ゲノムが公開されている植物のもつEPFファミリー遺伝子を網羅的に探索した。コケ植物以降の植物では10~40個程度のEPFファミリー遺伝子を持つことが明らかになり、このファミリー遺伝子およびその転写産物に由来する生理活性ペプチドが高等植物で広く保存されていることが明らかになった。今回解析した植物種には、イネ、トウモロコシ、ダイズ、ハクサイなどの有用作物も多く含まれており、これらの植物におけるEPFファミリーの機能を解析するための基本情報となると考えている。 また、stomagen受容体の同定を目指し、光反応性アミノ酸と蛍光官能基を導入した光アフィニティプローブを合成した。合成したプローブはstomagenと同等の強い生理活性を示したことから、stomagen受容体とも強く結合することが期待される。従来用いていたビオチン化光アフィニティプローブでは、植物内在性のビオチン化タンパク質のバックグラウンドが問題となっていたが、今回合成した新しいプローブで予備的なラベル実験を行った結果、植物内在性の蛍光バックグラウンドはほとんど観測されず、stomagen受容体と予想されるタンパク質のバンドが明瞭に観測されたことから、受容体同定へ大きく前進することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
EPFファミリーペプチドの構造活性相関研究に関しては、北陸先端科学技術大学院大学のグループによりNMR解析によってstomagenの立体構造が明らかにされ、stomagenとEPF1のキメラペプチドを用いた解析から、EPFファミリーで保存されているN末端から4番目と5番目のシステイン残基の間にある20アミノ酸程度のループ構造が活性発現に重要な役割を果たしていることが報告された(Nature Communications DOI:10.1038/ncommus1520)。この報告により我々の研究成果の新規性は失われてしまったことから、この研究は本年度をもって停止し、stomagen受容体の同定およびEPFファミリーペプチドの応用研究に注力したいと考える。 EPFファミリー遺伝子は高等植物で広く保存されていることが明らかになり、その配列情報も入手できたことから、次年度以降は実際にEPFファミリーペプチドが有用植物の植物体内で機能しているかどうか、また実際にそれらの植物体内からstomagenをはじめとするEPFファミリーペプチドが生産されているかどうかについて明らかにする予定である。 stomagen受容体の探索研究については、本年度合成した光アフィニティプローブとシロイヌナズナ幼葉から調製した表皮を用いて受容体のラベル実験およびラベル条件の最適化を行い、さらにラベルされたタンパク質の精製法について種々の手法を検討し組み合わせることで、受容体タンパク質の同定を目指す。
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Research Products
(3 results)