2012 Fiscal Year Annual Research Report
フェノール性物質を介した樹木根の根圏形成機構の解明
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23688017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 裕樹 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (90401182)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プロアントシアニジン / 根端 / 樹木根 / カテキンガレート |
Research Abstract |
根冠細胞におけるプロアントシアニジン(PA)の蓄積は、クスノキの強力なアルミニウム(Al)の抵抗に寄与する。しかし、根のPA蓄積と構造特性が、他植物のAl耐性に関連するか不明である。本研究では、Al耐性の明確な違いを持つ木本性メラルーカ2種の根におけるPAの組織および細胞分布と構造特性を調べた。Melaleuca cajuputi根は、M. bracteataとダイズの根の伸長を停止させる100倍濃い、500μMのAl溶液中にて有機酸放出にほぼ依存せず伸長を継続した。DMACAとTBOによる組織化学的染色から、フラバン-3-オールが両メラルーカ種の根表面で蓄積されることがわかった。しかし、根伸長域表皮細胞のPA集積が、M. cajuputiでは細胞周縁である一方、 M. bracteataでは細胞全体にわたる違いを有した。 LC-MSを用いた構造解析から、根頂端域のPA量と重合単位は、M. bracteataよりM. cajuputiでそれぞれ約3倍高いことがわかった。PA成分のカテキンガレート量は、M. bracteataよりM. cajuputiで10倍多く、後者の総単量体の半分強を占めた。これらのM. cajuputiに特徴的なPA特性は、強いAl耐性を有する他のメラルーカ3種でも保持されることがわかった。カテキンガレートは、カテキンやエピカテキンなどの非ガレート性フラバン-3-オール類よりも10倍高いAl3+との結合親和性を有することが結合試験から判明した。 Al耐性の異なるメラルーカ2種のPAサイズ分画から、重合性PAは、オリゴマーPAよりもはるかに高いAlとの結合活性をともに有した。これらの知見は、根頂端表皮細胞でのPAの組成、縮合、細胞内分布の特性が、メラルーカ種の高Al耐性に一定の役割を果たす可能性を支持する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルミニウム耐性の異なるメラルーカ種根端のフェノール性物質を解析することで、プロアントシアニジンの重合度や構成単位、ならびに細胞局在が強力なアルミニウム耐性に関与する可能性を世界で初めて明らかにすることができた。さらに、これらのフェノール性物質の結合活性が有力なAl結合物質である有機酸と比較してもはるかに強いことをin vitroの系で確認することができた。これらの発見はそれぞれ当初計画をさらに発展させて得られた成果であり、計画ならびに進捗の妥当性を示しているといえる。当初計画していた根圏土壌中や菌根形成のPAの影響評価、およびPAの循環再吸収評価については興味深い予備知見を得つつあり、平成25年度の本研究計画の繰越年度を利用して最終的な結論としてまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
<根圏土壌のPAの影響評価>根圏微生物の集散に及ぼす根PAの影響を明らかにするため、水耕栽培したPA集積性の異なる樹木根に抽出土壌微生物群を投与し、微生物組成の変化や根表層の定着種を同定する。 <菌根形成におけるPAの影響評価>菌根形成におけるPAの効果を明らかにするため、PA集積性の異なる樹木種に菌根菌を接種し、菌根形成過程ならびに菌根形成率を測定する。また、PA添加した最小培地に菌を接種した場合の菌糸発達を追跡する。 <PA耐性菌の選抜> 土壌中のPA動態に関与する植物以外の生物因子を明らかにするため、PAを唯一の炭素源とする選択培地を用いてPA利用可能な耐性菌を選抜して同定を行う。PAに対する濃度依存性やPA構成の違いに対する基質特異性を評価する。
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Research Products
(3 results)