2013 Fiscal Year Annual Research Report
フグは毒を何に使うのか?~クサフグ組織中のテトロドトキシンの動態から探る~
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23688023
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
糸井 史朗 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (30385992)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フグ毒 / テトロドトキシン / TTX / クサフグ / トラフグ |
Research Abstract |
本研究は、「フグは毒を何に使うのか?」という命題へのアプローチとして、有毒フグであり安定して入手可能なクサフグに加え、種苗生産の盛んなトラフグを主なモデル魚に用いて実施している。 前年度のクサフグ仔魚を用いた研究成果をもとに研究を展開し、トラフグ属魚類の孵化仔魚におけるTTX保有の生物学的意義の一端を明らかにする成果を得ることができた。すなわち、天然トラフグ親魚より得られた受精卵をふ化させた後、当該仔魚を被食者として用いる捕食実験を実施した。捕食者にはヒラメおよびスズキの幼魚(人工種苗)を用いた。また被食者の対照として、メダカやキンギョの仔魚およびアルテミアの成体を用いた。その結果、トラフグ仔魚は、いずれの捕食者によって咥えられた直後に吐き出されたのに対し、メダカ、キンギョおよびアルテミアは口腔に導入された後に吐き出されることはなかった。当該実験は、昨年度に引き続きクサフグ仔魚を用いた実験も実施し、再現性を確認した。さらに、LC-MSMS分析によりトラフグおよびクサフグ仔魚のふ化仔魚のTTX量を測定したが、1個体あたりのTTX量はごく微量で捕食者を死に至らしめるものではないことが示された。抗TTX抗体を用いた免疫組織化学的染色により、クサフグおよびトラフグともに、仔魚の体表を取り囲むように体表にTTXが局在することが明らかとなった。これは、ふ化直後の仔魚の体表を取り囲むように体表にTTXを局在させることで、自らがTTXの保有者であることを捕食者に提示し、生活史の中で最も弱い時期を生き残るためにTTXを使用していることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通りに進展していると考えている。当該研究成果を学会誌に投稿した際に指摘・助言された事項についても調べる必要があると考えており、新たな課題として整理して取り組んでいる。「フグは毒を何に使うのか?」との命題解明に向け、着実に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の計画自体、複数年にわたって実施してきたものが多く含まれているため、最終年度にこれらを確実にまとめていく予定である。またこれら研究を成果としてまとめる中で、指摘・助言された事項があるが、研究協力者との議論の中でより本質に迫る方向性を見出しつつあるので、今後もより緊密に議論しながら研究を進めていく予定である。なお、前年度より当初予定していなかった飼育実験等を当初の計画に加えて実施しており、今後も継続予定である。
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[Journal Article] Larval pufferfish protected by maternal tetrodotoxin2014
Author(s)
Itoi, S., Yoshikawa, S., Asahina,K., Suzuki, M., Ishizuka, K., Takimoto, N., Mitsuoka, R., Yokoyama, N., Detake, A., Takayanagi, C., Eguchi1, M., Tatsuno, R., Kawane, M., Kokubo, M., Takanashi, S., Miura, A., Suitoh, K., Takatani, T., Arakawa, O., Sakakura Y., Sugita, H.
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Journal Title
Toxicon
Volume: 78
Pages: 35-40
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] A possible process of tetrodotoxin accumulation in marine pufferfish of the genus Takifugu
Author(s)
Itoi, S., Uchida, J., Ishizuka, K., Takimoto, N., Mitsuoka, R., Takanashi, S., Noguchi, S., Ishikawa, K., Okamura, T., Komori, K., Tamai, M., Domeki, S., Sugita, H.
Organizer
The 10th International Marine Biotechnology Conference (IMBC2013)
Place of Presentation
Brisbane, Australia
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