2011 Fiscal Year Annual Research Report
ブタ母乳中タンパク質の網羅解析と機能評価-健全離乳システム構築のための基盤研究-
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23688034
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
井上 亮 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (70443926)
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Keywords | ブタ / 母乳 / プロテオーム / 腸管免疫 / 発達 |
Research Abstract |
本年は、母乳(離乳)が仔豚の腸管に与える影響および母乳のプロテオーム解析を行った。経日的に仔ブタ (3-4頭)の回腸粘膜を採取し、Porcine Genome Chip(Affymetrix)を用いて遺伝子発現を解析した。21日齢で離乳する群 (28w, 35w)と21日齢以降も哺乳を継続する群(28s, 35s)を設けた。14、21、28s、35sの4群間で発達に伴う回腸粘膜の遺伝子発現の変化を検討したところ、14日齢とその後の日齢とは大きく異なっていた 。14-21日齢間で発現が有意(p<0.05)に異なった遺伝子数は4155であったのに対して、21-28s日齢間では296、28s-35s日齢間では156であった。28w群と28s群 では、3461遺伝子の発現が有意に異なっていたが、35w群と35s群で発現に有意な差が見られた遺伝子数はその約1/6の557遺伝子であった。以上のことから、仔ブタの腸管免疫系は14-21日齢間で大きく発達すること、離乳の影響は日齢とともに小さくなることが示唆された。母乳は仔豚の腸管の免疫系の発達に大きく寄与しているとともに、母乳の早期の摂取中断、つまり離乳により一度亢進した免疫系が減退する危険があることが明らかになった。 ブタ初乳及び常乳のプロテオーム解析の結果、181種類のタンパク質を同定した。興味深いタンパク質としては、初乳のみで検出されたサイトカインである インターロイキン18や初乳、常乳で共通して検出されたインターロイキン12などのTh1型免疫の活性化に関わるものが挙げられる 。また、ヒトやウシの初乳、常乳では検出例のない抗菌性タンパク質もいくつか検出することができ、これらは、仔の初期感染防御に役だっていると考えら れる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初乳の採取以外は全て順調に進行したが、初乳採取を予定していた協力農場で新型のウィルスが横行してしまったため採取スケジュールを遅らせることを余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定通り、仔の免疫系、特に腸管免疫系の発達に重要であると考えられる乳中タンパク質の機能の実際に評価する。研究 開始当初は30程度のタンパク質の機能を評価する予定であったが、プロテオーム解析の結果、評価に値する、または評価することので きるタンパク質は想定よりも少ないと判断したため、精査のうえ、数種類のタンパク質の評価を行う。
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