2012 Fiscal Year Annual Research Report
樹状細胞亜集団特異的抗原デリバリーによる抗腫瘍ワクチンの開発
Project/Area Number |
23689009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伝田 香里 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (00313122)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / レクチン / ターゲティング / 抗腫瘍ワクチン / 糖鎖 |
Research Abstract |
癌の治療において、特に転移抑制・再発予防といった点から免疫療法は注目されており、臨床的にも用いられはじめているが、その効果はまだ十分とは言えず、新たな免疫療法の開発が望まれている。免疫応答の制御において重要な役割を担う樹状細胞には、種々の亜集団が存在し、個々の亜集団により異なるタイプの免疫応答が制御される可能性が示されつつある。つまり、抗腫瘍ワクチン応答を誘導するのに適切な樹状細胞亜集団を選択し、抗原を特異的にデリバリーすることは、有効な抗腫瘍ワクチン開発につながると考えられる。そこで、本研究課題では、樹状細胞、特にマクロファージガラクトース型C型レクチン2(MGL2)を発現する皮膚及び皮膚所属リンパ節に存在する樹状細胞亜集団に抗原を特異的にデリバリーする新たな抗腫瘍ワクチンを開発することを最終的な目標としている。 本年度の研究では、モデル抗原として卵白アルブミン(OVA)を結合させた抗MGL2抗体をアジュバントとしてLPSと共に投与した場合、抗原が皮膚所属リンパ節に存在するMGL2陽性樹状細胞にターゲットされ効率的なIgG1産生が生じるため、皮膚所属リンパ節に存在するMGL2陽性樹状細胞が特徴的な免疫応答を誘導する樹状細胞亜集団であると考えられた。そこで、MGL2陽性樹状細胞の遺伝子発現パターンを網羅的に解析することで、MGL2陽性樹状細胞の特性解析を行った。その結果、皮膚及び皮膚所属リンパ節に存在する別のC型レクチンであるランゲリン陽性の樹状細胞亜集団に比べIL-12の発現レベルが低いことが判明し、MGL2陽性樹状細胞が他の樹状細胞亜集団とは異なる特徴的な亜集団であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
皮膚及び皮膚所属リンパ節に存在する樹状細胞亜集団が異なる免疫応答を制御する可能性が示されているが、その分子基盤はあまり明らかになっていない。今回、MGL2陽性樹状細胞がIL-12産生能の低い特徴的な樹状細胞亜集団であることを明らかにしたことは新規性が高く、評価できる結果である。しかし、初年度計画のMUC1タンパク質の調製の遅れのため、MUC1ワクチンを用いた解析には遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終目標は、抗原の樹状細胞へのターゲティングによる新たな抗腫瘍ワクチンを開発することである。本年度の研究で得られたMGL2陽性樹状細胞のIL-12産生能が低いという特徴は、抗腫瘍ワクチンを開発する上で細胞性免疫の誘導につながらない可能性があり問題となる可能性がある。一方で、IgG1クラスの抗体産生は抗体依存的な細胞傷害性につながる可能性が高く、この点は抗腫瘍ワクチンとしては望ましい。ゆえに、今後はMGL2への抗原ターゲティングが実際にin vivoで抗腫瘍活性を持つか否かを判定することが重要であると考えられる。
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Research Products
(6 results)