2012 Fiscal Year Annual Research Report
RNA結合タンパク質・アンチセンス転写物を利用した高効率遺伝子発現ベクターの開発
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23689010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 文教 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (70370939)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 非翻訳領域 / RNA結合タンパク質 / マイクロRNA / 遺伝子治療 / アデノウイルスベクター |
Research Abstract |
遺伝子治療の実用化には、標的組織特異的に高効率な遺伝子発現を示す遺伝子発現ベクターの創製が、必要不可欠である。そこで本課題では、まずmRNAの安定性を向上させることにより、遺伝子発現の増強を試みた。本年度は、mRNAの3’非翻訳領域のAU-rich配列(ARE)を挿入するとともに、細胞質に局在する変異型HuRを過剰発現させたところ、遺伝子発現効率の向上が認められた。しかし、その遺伝子発現効率の上昇は2-3倍であり、期待されたほどの効果は観察されなかった。 次にmiRNA標的配列の近傍にAREを挿入することで、miRNAによる遺伝子発現抑制を高効率に誘導することを試みた。昨年度は、miR-122aに対する標的配列を用いて検討を行ったところ、有意な差は認められなかったことから、今年度はmiR-142-3pに対する標的配列を用いて検討を行ったが、こちらに関しても有意な発現抑制の向上は認められなかった。 しかし本検討を実施している中で、miRNAを利用してアデノウイルスベクターのE4遺伝子の発現を抑制したところ、アデノウイルスベクターによる初期の肝障害を有意に抑制されることを見出した。そこでこのメカニズム解明に向けて検討を行ったところ、アデノウイルスベクターによるサイトカイン産生がこの初期の肝障害に関与すること、細胞周期関連遺伝子の発現がE4遺伝子の発現抑制により大きく変動することを見出した。現在、さらに検討を進めている。 また申請者らは既にmiRNAを利用して感染域を制御可能な制限増殖型アデノウイルスを開発済みである。この制限増殖型アデノウイルスを用いて、血中の癌細胞を検出可能か検討したところ、従来の制限増殖型アデノウイルスでは多くの偽陽性が見られたのに対し、miRNAによる遺伝子発現制御システムをりようすることで、偽陽性の出現を有意に抑制することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HuRおよびAREを用いた遺伝子発現効率の向上に関する研究については、期待されるほどの遺伝子発現効率の向上は観察されなかった。しかし、HuRとmiRNAによる遺伝子発現制御に関する研究において、興味深い知見が得られるなど、おおむね成果が得られている。また本成果は、学会発表8件(うち招待講演1件)論文(総説)発表2件を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のようにHuRおよびAREを用いた遺伝子発現効率の向上に関しては期待通りの結果が得られなかったが、HuRとmiRNAによる遺伝子発現制御に関する研究において、興味深い知見が得られた。それは、アデノウイルスベクターによるin vivo遺伝子導入において、miRNAを利用してE4遺伝子の肝臓における発現を抑制したところ、自然免疫活性化による肝障害が大きく抑制された。そこで来年度はなぜ肝障害が抑制されたのか、そのメカニズム解明に向けて検討をすすめる。さらに、miRNAによる遺伝子発現制御機構を搭載した制限増殖型アデノウイルスを利用して癌細胞の検出系の確立を目指す。
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