2011 Fiscal Year Annual Research Report
分化能と造腫瘍性から迫るヒトiPS細胞の品質決定機構の解析
Project/Area Number |
23689017
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡田 洋平 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (30383714)
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Keywords | ヒトiPS細胞 / 神経分化 / 造腫瘍性 / 品質評価 |
Research Abstract |
ヒトiPS細胞(201B6, 201B7, 253G1, 253G4)、およびヒトES細胞(KhES1)から神経幹細胞へと分化誘導し、その特性解析を行った。その結果、201B6以外の株は高効率に神経幹細胞へと分化誘導可能であり、in vitroにおいて機能的なニューロンへと分化した。また、フローサイトメトリーを用いた解析により、神経幹細胞へと分化誘導後には、Tra-1-60, Tra-1-81陽性の未分化細胞の残存は0.1%以下であり、また、90%以上の細胞がCD56陽性の神経系前駆細胞へと分化していた。次に、分化誘導中のレトロウイルス由来外来遺伝子の発現を定量的RT-PCRにより解析したところ、未分化iPS細胞では外来遺伝子はサイレンシングされているものの、一部の株では分化誘導とともに再活性化が起こっていた。 次に誘導した神経幹細胞を免疫不全マウス(NOD/SICDマウス)の脳及び精巣へ移植し、その分化能と造腫瘍性を検討した。その結果、どの株由来の神経幹細胞も脳内で機能的な神経系細胞へと分化したが、一部の株から誘導した神経幹細胞はグリオーマ様腫瘍を形成することを見出した。 さらに、レトロウイルスはゲノムへ挿入されるベクターであることから、新たな手法である、ゲノムに挿入されないエピゾーマルベクターを用いて樹立したヒトiPS細胞(409B2, 414C2)を用いて同様の実験を行った。その結果、これらのヒトiPS細胞も高効率に神経幹細胞へと分化誘導可能であり、NOD/SCIDマウスの脳及び精巣において、神経系の3系統の細胞へと分化した。しかしながら、ゲノムへ挿入されないベクターにより作成されたヒトiPS細胞から誘導した神経幹細胞であっても、in vivoにおいてグリオーマ様腫瘍を形成することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたレトロウイルスにより樹立されたヒトiPS細胞のin vitroおよびin vivoの分化能と造腫瘍性の解析を行うことができた。さらに、追加細胞株として新たな手法により樹立された(ゲノムへ挿入されないベクターであるエピゾーマルベクターを用いて樹立された)ヒトiPS細胞からの神経分化誘導を行い、そのin vitro、in vivoにおける分化能を確認することができた。一方で、安全であると考えられていたこれらの株を用いても、造腫瘍性がみられることを見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒトiPS細胞株間の分化能や造腫瘍性の違いに着目し、in vivoにおける外来遺伝子の発現や、未分化状態、分化誘導後の神経幹細胞の遺伝子発現プロファイル、がん関連遺伝子の発現変化、ゲノムの解析を通して、その分子メカニズムの解析を行う。 また、新たな手法で樹立された(ゲノムに挿入されないタイプのエピゾーマルベクターを用いて樹立された)ヒトiPS細胞についても、その造腫瘍性をさらに詳細に解析し、レトロウイルスで樹立されたヒトiPS細胞との異同についての解析を進める。
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[Journal Article] RNA-Binding Protein Musashi1 Modulates Glioma Cell Growth through the Post-Transcriptional Regulation of Notch and PI(3) Kinase/Akt Signaling Pathways2012
Author(s)
Muto J, Imai T, Ogawa D, Nishimoto Y, Okada Y, Mabuchi Y, Kawase T, Iwanami A, Mischel PS, Saya H, Yoshida K, Matsuzaki Y, Okano H
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Journal Title
PLoS One
Volume: 7(3)
Pages: e33431
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Grafted human induced pluripotent stem cell-derived neurospheres promotes motor functional recovery after spinal cord injury in mice2011
Author(s)
Nori S, Okada Y, Yasuda A, Tsuji O, Takahashi Y, Kobayashi Y, Fujiyoshi K, Koike M, Uchiyama Y, Ikeda E, Toyama Y, Yamanaka S, Nakamura M, Okano H
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A
Volume: 108(40)
Pages: 16825-30
DOI
Peer Reviewed
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