2011 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌における癌幹細胞の発生・維持に関わる機構の解明
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23689019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川崎 善博 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 講師 (10376642)
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Keywords | 癌幹細胞 / 大腸癌 |
Research Abstract |
癌組織内において微量に存在する癌幹細胞が癌の再発・転移の大きな原因になっていると考えられている。その為、少数集団にすぎないが癌幹細胞こそは癌根治療法の本質的な標的であり、癌幹細胞の同定及び解析は発癌機構の解明、予後判定、新規治療法の開発等に極めて重要であると考えられている。 近年、FACS/MACSを用いることによって様々な細胞表面マーカーを指標として、生体癌組織から癌幹細胞が多く含まれる細胞集団を精製できることが明らかにされてきた。平成23年度の研究によって、我々は免疫不全マウスの異種移植腫瘍からFACSを用いて精製したヒト大腸がん組織由来CD44+CD133+細胞がCD44-CD133-細胞と比べて極めて高い造腫瘍能をもつことを見出し、CD44+CD133+細胞は癌幹細胞を多く含んでいる細胞集団であることを確認した。従来、我々が用いていたCD44或いはCD133のいずれかの分子を指標として分取した細胞集団と比べると、CD44+CD133+細胞は癌幹細胞をより多く含む細胞集団であると考えられた。現在、CD44+CD133+細胞とCD44-CD133-細胞から抽出したRNAを用いて網羅的遺伝子発現解析を行い、造腫瘍性に差がある細胞間において発現が変化する遺伝子群の同定を試みているところである。今後は、得られた遺伝子群の中から癌幹細胞の造腫瘍性に関わる因子を絞り込み、得られた造腫瘍性制御因子について癌幹細胞の発生・未分化性維持機構における役割を明らかにするために、分子生物学的・生化学的手法による解析を遂行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は1種類のマーカーを指標とした癌幹細胞の精製を計画していたが、我々が保持している大腸がん由来腫瘍組織は2種類のマーカーを目印とした分取によって癌幹細胞がより純化できることが判明した。この細胞集団を用いた様々な解析では、従来の1種類のマーカーを指標に分取した細胞を用いる場合と比べてバックグラウンドが少なく、より明確な結果を導きだすことができると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、造腫瘍性に差がある細胞間において発現が変化する遺伝子群の同定を、次世代シークエンサーを用いて試みている。今後、本解析によって得られた候補遺伝子の中から癌幹細胞の造腫瘍性に関わる因子を絞り込む為に、レンチウイルスshRNA発現システムを用いて候補遺伝子の発現を長期間に渡り安定抑制し、免疫不全マウスの皮下に移植した場合の腫瘍形成能に与える影響を検討する予定である。その後、得られた造腫瘍性制御因子について癌幹細胞の発生・未分化性維持機構における役割を明らかにするために、分子生物学的・生化学的手法による解析を遂行する。
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