2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞融合メカニズムから迫る、ポドソーム形成の新たな意義
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23689020
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
及川 司 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20457055)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞融合 |
Research Abstract |
アダプター分子Tks5は破骨細胞分化のプロセスで発現が増加し、破骨細胞どうしの細胞融合に必要であるという知見をH23年度までに得ていた。がんの悪性化プロセスの一つである上皮ー間葉転換(EMT)の過程でもTks5の発現上昇とポドソーム(またはインベードポディア)形成が見られ、がん細胞の浸潤形質を司っているという及川らの知見(科学技術振興調整費・H20~H24による)からアイディアを得、がん細胞がマクロファージや破骨細胞と融合するためには、Tks5に依存したポドソーム形成、浸潤能獲得が必要である可能性について検証した。通常の条件ではがん細胞は融合しないため、破骨細胞と同様に転写因子NFATc1が活性化されることや、炎症性微小環境 (Johansson, C. et al., Nat. Cell Biol, 2008) (Nygren, J. et al., Nat. Cell Biol, 2008)のような、”プラスα”の因子が必要であると考え、その条件の検討を行った。その結果、Tks5の恒常的な発現が認められ、Tks5に依存したインベードポディアを形成するメラノーマ細胞株、B16F0において、破骨細胞との融合能を認めた。そしてこのインベードポディア形成能と破骨細胞との融合能は、炎症性サイトカインであるTGF-betaやTNF-alphaの添加により増強した。またRNAi法によりTks5の発現を抑制すると、B16F0と破骨細胞との融合が抑制されることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
破骨細胞、がん細胞にそれぞれ見られるアクチンに富んだ構造物、ポドソームとインベードポディアが細胞融合マシーナリーであることは、当初の計画通りに順調に研究を進め、示すことができた。さらにその後、臨床がん組織の染色によりマクロファージや破骨細胞-がん融合細胞が実際に存在することを見いだし、こうした融合細胞がどのような性質を持つのか、解析を始めることができた。しかし一方で、破骨細胞特異的なTks5ノックアウトマウスの作製に関しては、まだキメラマウスが得られておらず、遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
・平成24年度までに得られた知見をもとに、補足・追加実験を行う。 具体的には、臨床がん組織の染色により存在が判明した、マクロファージや破骨細胞-がん融合細胞がどのよう な形質を持つのかを解析する。性質を調べる始めのステップとして、マクロファージの機能や破骨細胞分化のマ スター転写因子であるNFATc1に注目した。NFATc1は破骨細胞またはその前駆細胞において発現及び活性化が必要十分であるが、多くのがん細胞では発現が認められない。融合細胞においては、がん細胞とマクロファージや破骨細胞の核と細胞質が共存するため、がん細胞の核はNFATc1の影響を新たに受けることになる。この状況を模倣するために、恒常的活性化型NFATc1 (NFATc1CA)の発現を薬剤(Dox)により誘導できる細胞株 (MCF7-NFATc1CA)を樹立し、遺伝子発現や浸潤能獲得への影響を調べる。また、この細胞をヌードマウスに皮下移植した際にできる腫瘍についても免疫組織学的に解析する。 破骨細胞特異的なTks5ノックアウトマウスの作製に関しては、ターゲティングベクターを保持した相同組換え体クローンからキメラマウスを得るべく作業を継続する。
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Research Products
(6 results)