2012 Fiscal Year Annual Research Report
プラス鎖RNAウイルスのゲノム複製小胞形成機構の解明
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23689028
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
森 嘉生 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 室長 (40379095)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ウイルス / 細胞骨格 / アクチン |
Research Abstract |
プラス鎖RNAウイルスの一種である風疹ウイルスのゲノム複製に関わる非構造タンパク質p150と相互作用する因子の探索を行った。ウイルス側の因子としてはウイルスゲノムと結合してウイルス粒子を形成する役割を演じるCタンパク質とp150が感染細胞内で共局在することを明らかにした。Cタンパク質の欠損変異体を用いた解析から、p150との共局在はアミノ末端領域が重要であり、更にMet9、 Leu12、 Leu16、 Leu23に点変異を導入することでp150との共局在が失われることから、これらの疎水性残基が重要であることが分かった。これらの残基をそれぞれアラニンに置換した点変異ウイルスでは、野生型ウイルスと比較して、ウイルス産生が著しく低下したことから、Cタンパク質とp150の共局在は生物学的に重要な機能を担っていることが示唆された。 また、宿主側の因子としては、細胞骨格を形成するアクチンとp150が相互作用することが明らかとなった。P150はアクチンと結合し、強くアクチンフィラメント形成を促進することが示唆された。P150のAsp547をアラニン置換するとアクチンとの共局在が失われ、この変異を導入したウイルスは増殖能が低下することから生物学的に重要な機能を担っていることが示唆された。現在、アクチンとp150の相互作用がどのようにしてウイルス増殖に関与しているのか、およびこの相互作用が細胞に与える影響はどのようなものがあるかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノム複製に重要なウイルスタンパク質と相互作用する因子を同定できた。特にアクチンは細胞骨格を形成するタンパク質で細胞膜の物理的な構造を調整する上で非常に重要な役割を果たしていることが分かっていることからゲノム複製小胞の形成への関与が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
風疹ウイルスp150とアクチンとの相互作用がゲノム複製およびゲノム複製小胞の形成に関与するかをさらに詳細に明らかにしていく。また、風疹ウイルスは先天性風疹症候群と呼ばれる先天性障害が起きることが知られている。強い細胞障害を起こさず、持続感染をすることが原因と考えられているが、この発生分子メカニズムは明らかとなっていない。アクチンは細胞の分裂および運動性等、分化・増殖に重要であることから、先天性風疹症候群の病原性メカニズムの解明も行えるかもしれない。本年はさらに風疹ウイルスゲノム複製膜がどのような膜マイクロドメインかを明らかにする。
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