2011 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌幹細胞におけるエピジェネティックな制御機構の解明と新規治療法の確立
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23689039
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
千葉 哲博 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00381583)
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Keywords | 肝臓癌 / 癌幹細胞 / エピジェネティクス / ポリコーム遺伝子 / DZNep / 癌幹細胞特異的治療法 |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに、正常肝幹細胞および肝癌幹細胞の双方の自己複製制御において、PcGタンパクが中心的役割を果たすことを明らかにしてきた(Gastroneterology, 133;937, 2007,Chiba et al, J Hepatol,52;854, 2010, Cancer Res, 68;7742,2008)。中でも、polycomb repressive complex(PRC2)の中心的構成分子であるEZH2は、ヒストンH3K27メチル化酵素とし機能し、標的遺伝子の強固な転写抑制の起点となることが報告されている。 申請者らは、レンチウイルスベクターや低分子化合物3-deazaneplanocin A(DZNep)によるEZH2の機能阻害を行うことで、肝癌幹細胞が分化傾向を示し、造腫瘍活性が低下することを確認した。培養系および免疫不全マウスの異種移植の系にて、DZNepと同様に5-FUも肝癌細胞の増殖抑制を示したものの、フローサイトメトリーの解析では、5-FU投与マウスの腫瘍では癌幹細胞分画がenrichされるのに対して、DZNepでは同分画の確実な減少を確認した。以上より、DZNepの癌幹細胞特異的治療薬としての可能性を見出した(Chiba et al, Int J Cancer, 130;2557-67, 2012)。 また、多くの固形癌において幹細胞マーカーとして機能する1型アルデヒド脱水素酵素(ALDH1)に着目し、肝癌細胞における機能解析を行った。ALDH1のノックダウンによる癌幹細胞分画の増減はなく、また癌幹細胞の増殖活性および造腫瘍活性の変化もみとめられなかった。病理学的検討では、ALDH1を高発現する肝癌では低発現の肝癌に比べて、AFP値が低く(P<0.01)、組織学的に高分化型肝癌を多くみとめ(P=0.03)、術後再発率が低い傾向がみとめられた(P=0.08)(Chiba et al, Hepatol Res, in press)。よって、肝癌において、ALDH1は幹細胞マーカーではなくむしろ分化マーカーとして機能し、良好な予後を示すバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒストンメチル化酵素阻害剤(DZNep)が肝癌幹細胞に対して抗腫瘍効果を示すことを明らかにした。また、正常肝幹細胞を用いたChlP-seq解析を行い、H3K:27me3修飾を受ける遺伝子座、Ezh2の標的遺伝子座を特定しえた。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリコーム遺伝子Ezh2がピストン修飾を介して直接的に制御する標的分子を多数同定したが、その中から注目に値する分子を複数リストアップし、正常肝幹細胞と肝癌幹細胞における機能解析を既に開始している。
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Research Products
(7 results)