2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアを起点とする慢性炎症機序の解明と心不全治療への応用
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23689042
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
彦惣 俊吾 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (30423164)
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Keywords | 炎症 / ミトコンドリア / 心不全 |
Research Abstract |
心不全の発症、進行に慢性炎症が重要な役割を果たしていることが注目されているが、その発生機序については全く不明であった。私はこれまでに、不全心において変性ミトコンドリアの蓄積、その分解亢進を見出してきており、ミトコンドリアの構成分子であるDNAと電子伝達系分子が、構造上バクテリアと共通の特徴を有していることから、ミトコンドリアの分解産物が自然免疫系を活性化する可能性があると考えられる。従って、心筋の慢性炎症の原因として変性ミトコンドリアの分解異常が中心的な役割を果たしていると考えうる。本研究では、変性ミトコンドリアの分解による分解産物が心筋での慢性炎症の原因であることを実証し、その分解分子機序の解明と慢性炎症の制御による心不全治療への応用を目指して検討を開始した。 本年度は以下の検討をおこなった。 1.心筋慢性炎症におけるミトコンドリアDNAの役割の解明 ・心不全におけるミトコンドリアDNA、DNase II活性、TLR9経路活性と炎症反応を検討し心不全においてこれらの因子に大きな変化が認められることを見出した。 ・マウス心不全モデルを用いて、心不全発症機序にミトコンドリアDNA,TLR9経路を介した炎症反応が重要な役割を果たしていることを見出した。 2.ミトコンドリア分解機構の心筋炎症における役割の解明 ミトコンドリア分解に関わる細胞内分解機構であるオートファジーが心筋の炎症にどのように関与しているかを解明するため、心筋特異的atg5欠損マウスに圧負荷を作製し、心筋での炎症所見を検討した。結果、atg5欠損マウスでは容易に炎症が生じることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリアを起点とする慢性炎症機序のin vivoでの存在を示すデータがおおむね得られ、疾患モデルによる検証も順調に進行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
各種遺伝子改変マウス、および野生型マウスの病態モデルを用いてミトコンドリアDNAおよびその他のミトコンドリア成分を起点とする心筋における慢性炎症機序の解明を目指す。さらに、その機序を制御することによる慢性炎症抑制を介した心不全治療を目指して、標的分子などの絞り込みをおこなう。現在のところほぼ順調に研究は進捗しており、今後も計画通りに研究を推進する。
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