2012 Fiscal Year Annual Research Report
気道上皮細胞の分化プログラムと数量的バランス制御の解明
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23689044
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森本 充 独立行政法人理化学研究所, 呼吸器形成研究チーム, チームリーダー (70544344)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 呼吸器 / 発生学 / Notchシグナル |
Research Abstract |
本研究では、呼吸器の発生の基本原理を解明するため、気道上皮組織における線毛細胞、クララ細胞、神経内分泌細胞の分化プログラム、数量的バランス制御機構の解明を行なっている。特に近距離細胞間の情報伝達経路であるNotchシグナルの役割に注目し、各気道領域によって異なる数量的バランスで特殊化細胞が出現し、維持されるメカニズムの解明を試みている。昨年度までの研究により、発生中の気道上皮において3種のNotchレセプターのうち、Notch2が線毛細胞分化を抑制してクララ細胞分化を誘導すること、さらにNotch1,2,3が共役して神経内分泌細胞クラスターのサイズを制御していることをマウス個体で明らかにした。また胎児期の神経内分泌細胞を被っているSSEA-1陽性の新規細胞種 "SPNC細胞"を発見し、この細胞種が神経内分泌細胞クラスターのサイズ制御に機能する可能性を見いだした。そしてNotchシグナルがSPNC細胞の誘導、維持に必須であることを示した(Morimoto et al.,2012)。さらにSPNC細胞の細胞系譜追跡と同細胞の選択的な除去の両方ができる遺伝子改変マウスの作出に取り組んだ。一方、気道上皮細胞の初代培養系を使った線毛細胞分化誘導系を利用して、線毛細胞の分化プログラムの解明を行った。理化学研究所オミックス領域の協力のもと、初代培養系の前駆体細胞から線毛細胞への分化過程を、次世代シークエンサーを用いて時系列的にトランスクリプトーム(TC)解析した。その結果、幹細胞から繊毛細胞への分化過程で変化する時系列的な発現プロファイルを得る事ができた。現在データの解析を進めている。また一方で、計画していた粘液細胞の高効率誘導系の確立は、レンチウィルスを使った異所発現系の効率が悪く難航している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で掲げた以下の4つの目的を達成するために、申請者は多くの実験を実行した。 1)神経内分泌細胞ーSSEA-1+(SPNC)細胞間のNotchシグナルを介した相互作用と、それによる両細胞の数量的バランス制御機構をマウス個体で解明する。 2)SSEA-1+(SPNC)細胞が新規の上皮前駆細胞を含むか否かをマウス個体で検証する。 3)線毛細胞とクララ細胞の分化過程におけるトランスクリプトームの変化を解明する。 4)SSEA-1+(SPNC)細胞を初代培養系で誘導し、同細胞の小細胞肺ガン増殖抑制作用を検証する。 十分に研究が進展したため、目的1をすでに達成し、昨年度論文として報告した(Morimoto et al., 2012, Development)。目的2の達成のために現在SPNC細胞を追跡するマウスを作成中である。現在、レポーターが胎児肺で正しく機能することを確認中である。目的3は、すでに繊毛細胞の時系列的な次世代シークエンサー解析を終えており、データ解析が進行中である。また初代培養系でレンチウィルスsiRNAを使った遺伝子ノックダウン解析は現在実験系の確立を行っている。クララ細胞の高効率誘導系に関しても、Notch強制活性化による誘導を現在実験中である。目的4では、SPNC細胞を初代培養系での誘導に挑戦中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り進行中であり、研究計画を変更する予定はない。 目的1は達成された。 目的2の達成のため作成中であるSPNC細胞を追跡するレポーターマウスは、ほとんど完成されている。本年度前半のうちに、各種気道上皮細胞のマーカーとレポーターを二重免疫染色することでSPNC細胞の系譜を確定できると考えている。 目的3の達成のため、繊毛細胞の分化過程のTC解析をさらに進める。重要と思われる遺伝子に関して、まずは初代培養細胞でレンチウィルスsiRNAを使った遺伝子ノックダウンによりその重要性を検証する。特に重要と判断された遺伝子数個に関してはノックアウトマウスの作成に取りかかる。目的4の達成のため、SPNC細胞を初代培養系での誘導に挑戦中である。
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