2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経発達後期の神経回路再編成に注目した統合失調症発症メカニズムの検証
Project/Area Number |
23689055
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 朗子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (60415271)
|
Keywords | 統合失調症 / 樹状突起スパイン / カルシニューリン / ドーパミン |
Research Abstract |
統合失調症患者は疾患関連遺伝子多型を生前より保有しているにもかかわらず、疾患の発症は思春期以降であり、発症以前は明らかな異常を認めない。この時期的な不一致のメカニズムとして神経発達後期に生じる大規模な神経回路再編成に注目した。とりわけドーパミン作動性ニューロンの前頭前野への投射(VTA-PFC)が神経発達後期に急峻に完了することに注目し、このVTA-PFC投射の発火パターンをチャネルロドプシン(ChR2)で亢進させると、疾患モデルマウスの前頭前野のスパイン形態・密度および異常行動の発現パターンが変化するか検討する。まず疾患モデルマウスとして利用する前脳特異的カルシニューリンノックアウトマウス(CNB1^<flox/flox>,CaMKII-Cre)の繁殖を完了し、これらマウスの2光子顕微鏡によるin vivo前頭前野スパインイメージングを最適化した。遺伝子導入に必要なウイルスベクターとして、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルスの2型(AAV2)および5型(AAV5)の産生・精製の最適化を完了し、VTAへの投与にはAAV2が、PFCへ投与したい時にはAAV5が適していることが確認され、in vivo脳への遺伝子導入法が確立した。前頭前野機能を判定する行動実験系として、遅延非見本合わせ課題、遅延見本合わせ課題の2タスクのマウスでの最適化を完了した。今後は、当初の予定通り、VTA-PFC投射をChR2で亢進させ(Phasicなドーパミン投射を疑似)、前頭前野機能と前頭前野スパインへの影響を観察する。脳画像研究より統合失調症症例では、Phasicなドーパミン分泌は亢進する一方で、Tonicなドーパミン分泌は低下していることが示されている。このようなヒト脳で生じていることを光遺伝学的にモデル動物で疑似し、in vivoスパイン観察のように動物モデルだから可能になるアッセイと組み合わせた実験系を確立する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アデノ随伴ウイルスにより遺伝子導入の方法という実験計画に不可欠な手段、またin vivoでの2光子顕微鏡スパインイメージングという最も重要なアッセイが最適化でき、概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
VTAへの光刺激を最適化した後、前頭前野スパインイメージングと行動実験の本格コホートを開始する。
|