2011 Fiscal Year Annual Research Report
遠隔地RI治療を目指した短半減期アルファ放射体211Atジェネレータの製造と応用
Project/Area Number |
23689056
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鷲山 幸信 金沢大学, 保健学系, 助教 (80313675)
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Keywords | 放射線 / 癌 / 薬学 / α放射体 |
Research Abstract |
α線はβ線に対してRBEが高く、飛程が短いため、正常組織へのダメージを軽減しながら悪性細胞に集中的に放射線を照射できる。α線を放出する核種の中で^<211>At(T_<1/2>=7.21h)はハロゲン元素であり、ヨウ素標識の経験を活かしやすい。しかし、国内で医学利用を前提とした製造はこれまで皆無である。本研究では、医学利用を前提とした^<211>Atの製造と分離およびマウスにおける体内動態について検討した。^<209>Bi(α,2n)^<211>At反応による直接製造法では、入射αビームの最適エネルギーは副生成^<210>Atを避け27MeV前後であること、およびビーム電流の上昇に伴って生成放射能量は増加するが、発熱により一部蒸発することを確認した。^<211>Atの分離にはハロゲン元素の特徴である昇華性を活かし乾式分離を適用した。石英管に照射後のターゲットを置き、管状炉を用いて650℃まで加熱し、気化した^<211>AtをArガスで送り、冷却した生理食塩水に捕集した。^<211>Atは100%揮発移行したが、その捕集は6.1%であり今後捕集方法の改善の検討を要する。捕集した^<211>Atを^<125>Iと混合し、マウスに尾静脈投与し体内分布を検討した。投与後30分、1時間、3時間で解剖し、血液、腎臓、肝臓、胃、腸、甲状腺を採取し放射能を測定したところ、予備的結果ではあるが、^<211>Atと^<125>Iは同様の体内分布を示した。今後、時間経過に伴う集積の変化や異なる臓器への検討を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H23年度中に実施予定であった項目は、1)加速器を用いた^<211>Atの製造、2)抗体、ペプチド等への^<211>At迅速標識法の開発、3)細胞を用いた生物学的効果の検討、4)ラドン発生器を用いたラドンの物理化学的挙動の検証の4つの項目であった。このうち項目1)2)には予定通りの研究を実施し、4)についても基礎的な項目の検討が終了したところである。3)に関してはあまり進展を見なかったため、現在の達成度を(3)やや遅れている、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のα線放出核種^<211>Rnの製造には加速器が必要である。そこで日本原子力研究開発機構(原研機構)のタンデム型加速器を利用する。同時に、治療に有用な^<211>Rnの娘核種^<211>Atの製造を引き続き行い、^<211>Atを使用した担がんマウスの治療実験を行う。また、^<211>Rnを利用できない期間は、^<211>Rnの代替トレーサーとして^<222>Rnを利用してジェネレータの条件検討を行う。具体的には以下のとおりとする。 1)加速器を用いた^<211>Rnの製造 製造には日本原子力研究開発機構のタンデム加速器を利用する。実験では、^<209>Bi(^7Li,5n)^<211>Rn反応を利用して^<211>Rnを製造する。また加速器製造では副反応として^<209>Bi(α,6n)^<210>Rnがあり、^<210>Rnは最終的に生体にとって有毒な^<210>Poに壊変する。本研究では副反応で生成する^<210>Rnの量を実験的に見積もり^7Liビームの最適入射エネルギーを決定する。 2)ラドン発生器を用いたラドンの物理化学的挙動の検証 金沢大学所有のラドンガス(^<222>Rn)発生装置から発生する^<222>Rnを用いて、ラドンの物理化学挙動の検証を行う。発生させた^<222>Rnを、実際の分離実験に即した機器に導入し、寒剤や活性炭、有機溶媒中に導き、それらでの捕集効率を温度や圧力を変えた条件で検討する。 3)加速器を用いた^<211>Atの製造 使用にあたっては共同利用申請が必要であるためその手続きを行う。製造には大阪大学核物理研究センターAVF型サイクロトロンを利用する。実験では、^<209>Bi(α,2n)^<211>At反応を利用して^<211>Atを製造する。また加速器製造では副反応として^<209>Bi(α,3n)^<210>Atがあり、^<210>Atは生体にとって有毒な^<210>Poに壊変する。本研究では副反応で生成する^<210>Atの量を実験的に見積もりαビームの最適入射エネルギーを決定する。
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