2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳磁図を用いた耳鳴・感音難聴に関する脳神経活動の研究
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23689070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
岡本 秀彦 生理学研究所, 統合生理研究系, 特任准教授 (30588512)
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Keywords | 耳鳴り / 聴覚 / 脳磁図 / 音楽療法 / 国際情報交換(ドイツ) |
Research Abstract |
耳鳴りは非常に患者数が多くまた生活の質(QOL)を大きく悪化させる疾患であるしかしながら、耳鳴りは非常に主観的な疾患で客観的な指標に乏しく、その病態にはいまだ不明な点が多い。申請者らは非侵襲的にヒト脳活動を静音下で計測できる脳磁計を用いて、共同研究機関であるミュンスター大学と共に、耳鳴りの病態の解明とその治療に取り組んでいる。 耳鳴りは蝸牛に音刺激が入らない状態で音を知覚する状態である。そこで脳磁図を用いて、蝸牛ではコードされない音の情報(音の経時変化)がどのように聴覚野で処理されているかを調べた。また耳鳴り音は非常に小さい音でありながら、「慣れ」が起こらない特徴がある。音に対する慣れが静寂下と雑音下でどのように引き起こされるか、を正常被験者を用いて脳磁計で調べた。 また申請者らは周波数除去音楽を用いた耳鳴り治療を試みているが、先行研究では1年という長い時間を要した。そこで5日間、1日あたり6時間の周波数除去音楽療法を行うことで、主観的な耳鳴りが軽減すること、及び耳鳴り周波数に関連する脳活動が低下することを脳磁図を用いて明らかにした。またこの周波数除去音楽による治療効果は耳鳴りの周波数に依存しており、8000Hzを超える耳鳴り周波数では有意な治療効果がないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耳鳴りの治療に関する研究としては、まず短期間での周波数除去音楽療法にも効果がありそれが耳鳴り周波数に依存している事を示し、国際学術誌に発表した(PLoS ONE 2011)。現在、周波数除去音楽の帯域除去幅を変更したり、周波数特性を変更することで治療効果がどのように変化するかを、行動学的指標及び脳磁図を用いた神経生理学的指標を用いて研究している。計画書では体性感覚野と複合的に適切な脳の可塑性変化をもたらす予定であったが、近年の研究の進歩により、経頭蓋直流刺激(tDCS)が脳神経活動及びその可塑性を変化させる事がわかってきた。そこで、耳鳴りに対して周波数除去音楽と経頭蓋直流刺激を組み合わせた実験を行った。その結果を国際学術誌に投稿し現在査読中である。 基礎研究においても、蝸牛では分析できない音の経時情報(temporal information)は聴覚野で解析されているが、周波数情報に比べ解析に時間がかかることをなどを明らかにし国際学術誌で2報発表し(Front Psychol 2012, BMC Neurosci 2012)1報は査読中である。また静寂下及び雑音下の音の慣れに関する研究も国際学術誌で1報発表し(PLoS ONE 2012)また1報は査読中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、耳鳴りの患者のリクルートを進めているが、申請者が所属するのは研究機関であるためあまり人数が集まっていない。そのため、近隣の病院との連携をさらに深めていこうと考えている。また、慢性期の耳鳴り患者だけではなく、急性の耳鳴りを引き起こす疾患、例えば突発性難聴に対して治療を行うことでより高い治療効果が見込めるのではないかと考えている。そこで現在、突発性難聴の入院患者数が非常に多い大阪労災病院とも連携し研究を推進中である。
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