2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳磁図を用いた耳鳴・感音難聴に関する脳神経活動の研究
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23689070
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
岡本 秀彦 生理学研究所, 統合生理研究系, 特任准教授 (30588512)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 耳鳴り / 聴覚 / 脳磁図 / 音楽療法 / 国際情報交換(ドイツ) |
Research Abstract |
耳鳴りに苦しむ患者数は非常に多く社会的損失も大きいが、その病態には未だ不明な点が多く治療法も限られている。耳鳴りは非常に主観的な疾患で動物モデルの作成も難しいため、ヒトの脳活動を非侵襲的に計測できる脳磁図を用いて耳鳴りの病態解明に取り組むことは非常に有意義であると申請者は考えている。 耳鳴りの音は音量としては非常に小さいものでありながら「慣れ」が起こらない。耳鳴りの病態に関して「慣れ」は非常に重要な要因であると考え、規則的に呈示される音と不規則に呈示される音に対する「慣れ」を脳磁計を用いて計測した。刺激音が聞きやすい状態では規則的な音に対しより強く「慣れ」が起こり神経活動が低下するのに対して、聞こえにくい状態ではむしろ規則的な音に対しての神経活動が不規則な音に比較して大きかった。耳鳴りの患者の多くは聴力低下を有しており、周囲の音が聞こえにく環境下に置かれている。このような状態では音に対する「慣れ」が起こりにくくなっているのではないかと考えられる。音の「慣れ」には聴力や周囲の環境、被験者の注意の状態などの要因が大きく変化することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耳鳴りの治療に関する研究としては、先行実験では1年という比較的長期にわたる期間を要したが、申請者らの続く実験で、5日という短期間であっても周波数除去音楽療法には効果があること、またその効果は耳鳴り周波数に大きく依存している事を示し国際学術誌に発表した(PLoS ONE 2011)。現在、周波数除去音楽の帯域除去幅を変更することによる影響を、行動学的指標及び脳磁図を用いた神経生理学的指標を用いて研究している。計画書では体性感覚刺激と聴覚刺激を複合的に行うことで適切な脳の可塑性を促進する予定であったが、近年の研究の進歩により、経頭蓋直流刺激(tDCS)が脳神経活動及びその可塑 性を変化させる事がわかってきた。そこで、耳鳴りに対して周波数除去音楽と経頭蓋直流刺激を組み合わせた実験を行った。その結果を論文としてまとめ、国際学術誌に投稿し現在査読中である。 基礎研究に関しては、音に対する「慣れ」が起こった後に音が変化するとミスマッチ反応が出現することが知られているが、蝸牛では分析できない音の経時情報(temporal information)の変化に対するミスマッチ反応は左半球有意、周波数情報(spectral information)の変化に対するミスマッチ反応は右半球有意である事を明らかにし国際学術誌に投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、耳鳴りの患者のリクルートを進めているが、申請者が所属するのは研究機関であるためあまり人数が集まっていない。そのため、近隣の病院との連携をさらに深めていこうと考えている。また、慢性期の耳鳴り患者だけではなく、急性の耳鳴りを引き起こす疾患 、例えば突発性難聴に対して治療を行うことでより高い治療効果が見込めるのではないかと考えている。そこで現在、突発性難聴の入院患者数が非常に多い大阪労災病院とも連携し研究を推進中である。また国立病院機構大阪医療センターの耳鼻咽喉科・頭頸部外科とも新しく共同研究を立ち上げ近々倫理委員会にて審査される予定である。
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[Presentation] 聴覚誘発脳磁場の最前線2013
Author(s)
岡本秀彦
Organizer
第15回日本ヒト脳機能マッピング学会年次学術集会
Place of Presentation
東京大学伊藤国際学術研究センター(東京都)
Year and Date
20130705-20130706
Invited
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